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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 87

直線も突き放してゴール。
全くの完勝であったのだ。

リュウノラモーヌの勝利は、香港マイル発走前の樹里にはまだ届いていない。
国際電話と言う手もあるが、それは夜間にホテルに帰ってからと言う事になっている。

「そう言えば、留学行ってるあの子が世話してた馬だよな」
「ええ・・・きっと勝つわね」

香港には当日も祐志が同行していた。
そんな話をしながら発走を待つ。

シャロンが跨ってもスターライトブルーは落ち着いていた。
そんなに期間が経ってないのにすんなりと乗れてる事に寛子も驚く。
見知っている人間には甘えん坊なのだが、人見知り気質があるのか全ての人間にそうではなく、我儘な所も多い。
そんなスターライトブルーは最初はシャロンに警戒心を抱いていたが、暫くするとすっかり慣れてしまっていた。

「この子は自分のメスだと思うと乗せてくれるみたいね」

笑みを浮かべるシャロンの顔に寛子もドキッとする。
多分、彼女も馬の巨根に魅せられた者なのだろう。
異国の地で同好の者を見つけた気分だった。

(澪ちゃんと同じ匂いがするねぇこの子。馬への当たりも柔らかい感じがして、きっと超一流になるね。いつか日本で乗ってほしいわ)

スターライトブルーを早くも乗りこなしそうな雰囲気を醸し出すシャロンに寛子は目を細めていた。

本馬場にスターライトブルーを送り込む。
いつも通りの弾むような走りだ。

(ブーちゃんはいつもと変わりないけど、海外の強豪もオーラは違うね)

特にシャディード、コジーンの2頭の雰囲気は飛び抜けていた。

(こんな馬がいるんだ・・・)

芝のマイルでは世界最高峰の馬なのだ。
寛子も息を飲むしか出来なかった。
だが、鞍上のシャロンは澄ましたものだ。


そのシャロンの落ち着きはスタートで発揮された。
開いた瞬間のロケットスタート。
澪がスターライトブルーと共にやっていたそのもののスタートを初コンビで決めてきたのだ。

欧州のスローペースはマイルでもそうで、それに慣れているシャディードは後ろから。
アメリカの早い流れで育ったコジーンは3番手で折り合う。

快調に飛ばすスターライトブルー。
普段の香港もスローペースなので早いペースである。
だが、スターライトブルーにとって早い訳でもない。
2番手からは4馬身差。
リードも丁度良い。

(クレイジーな馬ね!このペースで勝てるんだから)

ビデオでスターライトブルーのレースを全て見せて貰っているが、こんなペースで勝てる馬はそうそういない。

外からは葦毛の馬体が一歩一歩近づいてくる。
コジーンだ。
アメリカ最強マイラーの名も伊達ではない。
しかし、スターライトブルーはさらに加速する。

直線。
外からはシャディードが追い込んでくる。
真ん中にコジーン。
内で粘るスターライトブルー。
三つ巴の攻防。

400mの長い直線をものともせず、スターライトブルーは更に脚を伸ばす。
だが、コジーンも脚を伸ばし、半馬身まで食い付く。
更にシャディードもその後ろに迫ってきた。

だが・・・
残り200mでスターライトブルーがコジーンを突き放す。
必死に追うコジーンだが、ジリジリと離れていく。
シャディードもこれ以上伸びない。

スターライトブルーがゴールした時、コジーンに1馬身差を付けていた。
海外の一流馬に完勝。
これは大きな勝利だったのだ。


その後、仁藤達やブラウンウッド厩舎スタッフ達との祝勝会・・・
奇跡のような勝利に日本側は大喜びだったが、香港側は以外と冷静だった。
それはブラウンウッド厩舎が香港での常勝軍団としての地位を築いていると言うのもあるが、理由はそれだけでない。

「我が厩舎の中で比べても、スターライトブルーは上位の実力があったから当然の勝利です」
「それに向こうの遠征の距離が長く調子を落としていました」

中華系の厩務員2人がそんな話をする。

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