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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 83

シンボリルドルフとてここまでの道悪馬場は経験がないはずだ。
待避所での佇まいはいつもと同じ。鞍上の岡江も泰然としてその時を待っていた。

そしてレーススタート。
ウインザーノットが果敢にハナを奪い逃げの手を打つ。
それについて行くのはゴールドアンドアイボリー。
シロノライデンは出遅れた上行き脚もつかず最後方。
船橋所属のロッキータイガーのすぐ後ろについて向こう正面に入っていく。

だが他馬の蹴った飛沫にシロノライデンが露骨に嫌がり、ズルズルと位置を下げてしまい、ポツンと最後方を走る事になる。

ハナを切った快速良血馬ウインザーノットは、ゴールドアンドアイボリーと先行争いを繰り広げるが速度はさほど上がらない。
そこにヤマノシラギク、サクラサニーオー、バリトゥと続く。
シンボリルドルフは中団に位置し、天皇賞とは違い折り合っている様子だった。

先行勢もさほど速度は上がらず、重い馬場に苦しんでいる様子なのは見て取れる。
中団とて走りにくそうではあったが、その中でもシンボリルドルフは苦もなく走っているのは流石としか言いようが無い。

そのシンボリルドルフ以外にも、心地良さそうに走ってる馬も居た。
ザフィルバートとロッキータイガーである。

ザフィルバートはニュージーランドの所属馬。
地元では大レースでの惜敗が多い名脇役と言った馬だが、道悪に滅法強い馬だった。
そしてロッキータイガーは地方馬で、これより悪いコンディションのダートで走ってきた馬だ。
2頭のダークホースにとって、この舞台はうってつけの場所だったのだ。

勝負どころの大欅の向こう側を通過するところでウインザーノットの手ごたえが怪しくなり出して後退。
これまでの戦績から2000mがベストだった馬だし、この馬場が余計にスタミナを消費させていたのだろう。
代わりにゴールドアンドアイボリーが先頭に立つ。

バリトゥ、ネメイン、ヤマノシラギクと続くが各馬すでに鞍上の手綱が激しく動いている。
その後から楽な手ごたえで接近するのがザフィルバート。
シロノライデンはまだ最後尾でもがいていた。

そして直線・・・
満を持して馬群中央から追い出したシンボリルドルフ。
それに内から伸びるザフィルバート。
2頭が内と外から先行馬を競り落としていく。

直線半ばで外側から猛然と追い込んで来たのはロッキータイガー。
地方の雄が豪脚を見せ、その鞍上は鞭をぐるぐると回しながら追ってくる。
船橋名物の風車鞭・・・
雨すら吹き飛ばしながら鞭が回り、ロッキータイガーはそれに合わさるように豪脚を唸らせる。

だが、シンボリルドルフが馬群から一歩抜けると、ザフィルバートもロッキータイガーも差は詰めれなかった。
ロッキータイガーがザフィルバートを交わした所でシンボリルドルフがゴール。
まさに皇帝の完勝劇であった。

なお・・・
シロノライデンは終始後方の12着。
初めて掲示板を外す大敗であった。


鞍上で澪が大きく息を吐く。
濡れた身体が負けたせいで余計に寒い。
どんどんとやる気を無くしていくシロノライデンを何とか追ってみたものの、最後は完全に白旗を上げるしか無かった。

「この馬場やったし、前走の疲れもあったんやろな」

仁藤もこの大敗にはサバサバ。

「今日走らせたのはちょっとかわいそうだったかもしれません」

樹里もガッカリはしたが、そうそういつも好走できるものとは思っていないから完全には落ち込んではいない。

シンボリルドルフの次走は有馬記念。
そして、来春からの海外遠征計画も発表され、この有馬記念が日本でのラストランとなる。

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