駆ける馬 81
「香港ですか」
仁藤の反応は樹里に近いが、意外にも否定的な反応ではなかった。
昔気質の調教師だと海外遠征に懐疑的な者も少なくないが、仁藤はそういうタイプではなかった。
「この時期の短距離路線は国内だとレースも少ないですし、今後は斤量も背負わされますからね」
ヘンリーの話だと、香港側からの招待も必要になるという。
「そこに向けて調整していきたいと思います。鞍上は引き続き澪に任せたいと思っていますけど、もちろん日本でも競馬はありますから、もしもの場合も考えますよ」
「お願いします」
そう話した樹里と仁藤。
その数日後、樹里は祐志と会っていた。
ホテルのスイートでの密会。
当然のように脱がされ、そして当然のように抱かれる。
「アイツらの肉便器で満足してるんだろ?」
もう俺なんぞ必要無いだろとニヤリと笑う祐志の胸板に頭を預ける樹里。
「意地悪ね・・・」
「頼み事だろ?言ってみな」
樹里から誘ったのは離婚後初めて・・・
だから話が早いと言うか、こう言うまどろっこしい事をしない所は昔からだった。
「香港競馬にコネは無い?」
「・・・ブラウンウッド厩舎ってのが向こうにある・・・調教師のセシリーは四十代だが、ケツがデカくていいオンナだ・・・その娘で騎手のシャロンも良いケツしたオンナだったな」
やはりと言うか、この男・・・
大したスケコマシである。
「まあ、呆れた・・・招待状が欲しいのだけど、そう言う頼みはいけるかしら?」
少し考える祐志。
そして、樹里にのし掛かり再び挿入する。
「んああぁっ!」
「一つ条件と言うか、頼みたい事がある」
ピストンしながら言う祐志に喘ぐしか無い樹里。
「入れっながらっ、とかっ、卑怯よぉっ!!」
「佐原が友人から頼まれた事でな・・・どのみちエリックに頼むつもりではいた」
なら条件に出すなって事なのだが、祐志としてタダでやると言うのは駄目と言う事なのだろう。
と言うか、若干樹里を揶揄っているんだろう。
「本当にぃっ!狡いっ、人ねっ!」
樹里が罵ってもニヤニヤ笑うのみ。
絶対に自分から離れないと分かってるからこその余裕の笑みなのだろう。
「サクラスマイルの84・・・サクラの馬主の馬だが、コイツの育成を任せたい」
サクラの冠名を持つ大馬主・・・
競馬界でも屈指の名士だ。
それが政治家である佐原と知り合いでもなんらおかしくはないが、そんな関係に少し驚く。
「虚弱体質で脚も、曲がっていて、競走馬にはなれん・・・だが、お気に入りの娘の子らしい」
サクラスマイルの母アンジェリカはスターロッチの牝系であり良血。
快速サクラシンゲキの母でもある。
だが、サクラスマイルの84を産んですぐ、サクラスマイルは腸捻転で死んでいた。
故に思い入れが強いのだろう。
「佐原のでもお前の所有馬でないが・・・お前の株も佐原の株も上がる」
ズンズンと突きながらそんな事を言う。
だが、涼風ファームはシャダイソフィアで大変な時期だ。
悶え狂う樹里とてそのぐらいの判断は出来る。
「で、でもっ!ンアアァァァッッッ!!」
「答えはハイかイエスだ!」
乳ピアスを捻られ悲鳴を上げる樹里。
その瞬間、膣が良く締まって祐志は満足げな顔をする。
一度は捨てたものの、良い女だ。
「エリック達をナメ過ぎだ・・・奴らならやるぜ」
確かに、シャダイソフィアの治療があり、女達は全員妊娠と言うハンデがあっても彼等は喜んでやりそうな気がする。
そして、その分・・・
樹里の身体も激しく求められるだろう。
「じゃあ、お願いっ!・・・もっと可愛がってぇっ!」
「おいおい、要求が増えてるじゃねーか」
そう言いながらもズンズン突く祐志。
やはりこの男のモノが一番しっくり来るのが悔しくも嬉しい。
「心配するな・・・香港の件も急いでやっておく」
「んいぃっ!凄いっ!こんなのっ!凄いぃっ!!」
ひたすら悶え狂う樹里。
「ま、頼んだからな」
「んぉおおおおぉっ!!!!!」
あっさり絶頂する樹里。
祐志に翻弄されながらも自分にとってもマイナスなことではないので、やる以外には選択肢はないのかもしれない。
数日中にサクラスマイルの84は涼風ファームにやってくる。
「血統的には全然イメージがないが、この馬体とオーラは走る馬ってのを感じるぞ」
ラルフが言う。
父はサクラショウリ。パーソロンの産駒で日本ダービー馬。
気性の悪い産駒が多く、今のところ目立った活躍馬は出ていない。
生まれてすぐに母サクラスマイルが亡くなり、この仔の乳母となったのが曾祖母のスターロッチだったという。