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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 80

2馬身差でバックストレッチへ。
ニホンピロウィナーは2番手のまま。
何かあれば前に出ようとしてくるのは間違いない。

ペースを緩めたいスターライトブルーだが、コーナー直前では5馬身差に広がる。
ペースが早すぎる・・・
誰もがそう思いながらコーナーに入っていった。

コーナーではやはりと言うか、差が詰まってくる。
ニホンピロウィナーだけでなく後ろの馬全体が迫ってきて、4コーナーではニホンピロウィナーは先頭から1馬身。
他の馬と集団になって直線に向かう。

そして、直線。
ニホンピロウィナーとスターライトブルーの馬体が合わさる。

ここで澪が鞭を入れる。
バックストレッチで少し脚は使ったが、その分コーナーでは落としていた。
特に京都の3コーナーから4コーナーは坂になっているからここで脚を使わないのは定石だ。

鞭を入れたスターライトブルーが力強く伸びる。
ニホンピロウィナーは半馬身遅れて追走する。
その差は詰まらず、後続からも距離が離れていく。

2頭の馬体が合わさる。
並んだら有無を言わせず突き放すニホンピロウイナーだが、今日ばかりはそうはいかなかった。
スターライトブルーが二の脚で粘るのだ。

(凄い!)

スピードで押し切るのがスターライトブルーの持ち味。
なので交わされたりしたら戦意喪失してしまうのではという印象が澪にはあった。
しかしスターライトブルーはニホンピロウイナーに食らい付いていく。
2頭の叩き合いはゴール板まで続いたのだ。

スターライトブルーとニホンピロウィナーが並んだ所でゴールインだった為、長い時間着順が定まらなかった。
直線入ってからほぼ並んだままで、どちらが勢いがあったのか分からなかった事・・・
何せ最後は首の上げ下げまでほぼ一緒でゴールしたので、本当に乗っている方も分からなかったのだ。
場内のざわめきが続くばかりだった。

そんな中、確定のランプが点る。
どよめきが更に大きくなる。
それはG 1史上初の同着決着であった。

「こ、これっ・・・どうするんですかね?」
「まあ、レイとか2つ用意しとらんからな・・・撮影も順番ちゃうかいな?」

混乱する澪に笑うしかない仁藤。
嬉しいのだが、えらいこっちゃと言うのが正直な所だ。
鼻毛の差まで写して解析する職員達が匙を投げるぐらいの同着である以上、受け入れてしまうしかない。

「まっ、ニホンピロウィナーは有終の美を飾ったし、ウチのは世代交代できたしで万々歳やな」

そう言う他の無いレース結果であったのだ。

「おめでとうやね」
「いえ、そちらこそですよ」

仁藤との会話の後やって来たのはニホンピロウイナー鞍上の河井。
最後までデッドヒートを演じた者同士の熱い握手を交わす。

「こんなんも滅多にないことやな」
「あはは、まあ…」
「これもええ経験やね。お前さんはまだまだ勝てる騎手になれるはずやから」
「はい」

レースを終えた者同士の会話。
そこにはさまざまな人間模様が見てとれる。

今回の京都観戦には樹里にヘンリーが同行していた。
シャダイソフィアの一件からなる彼女なりの感謝のしるしだ。

「ジュリ、スターライトブルーの次に関して、俺が勝手ながら考えたプランがあるんだけど…」
「うん、聞かせてくれる?」

樹里としては馬の状態を見ながら年内休養か、使うなら阪神カップくらいと考えていた。

「あくまでスターライトブルーのコンディション優先だが、香港に行っても通用すると俺は思ってる」

樹里は目をぱちくりとさせた。

「もしかしてだが・・・香港で競馬してる事は知らなかったか?」
「ええ・・・全く」

やれやれと言いながらもヘンリーが説明する。
香港競馬は日本の競馬と同時期の発祥で、宗主国であるイギリスのテコ入れで発展してきた。
レベルは意外と高く、また中国本土でギャンブルが禁止されている為か人気も高い。
近年、沙田(シャティン)競馬場が建設された事で、益々盛んになっていた。
その沙田競馬場で年末に行われるビッグイベントが香港国際競走と言うG 1競走が4つ行われるものだ。

「香港は日本から近いし、スターライトブルーのスピードなら香港マイルで戦えると見ている」

ヘンリーの言葉に成る程と樹里は思う。
そんな近距離に良い遠征レースがあるのに、何故みんな挑戦しないのかが良く分からないが、確かにそれは面白いと思ったのだ。

「分かりました・・・仁藤先生に相談してみましょう」
「ああ、それがいいよ」

まずは管理する仁藤調教師に話してからだ。

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