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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 75

そして、いよいよ秋のG 1シーズンがスタートする。
第一弾は秋華賞。
エルプス、ノアノハコブネ、G 1馬2頭が馬群に沈む中、勝利したのはリワードウイングだった。

菊花賞はダービー馬シリウスシンボリが海外遠征で不在の中、勝利したのは復活のミホシンザン。
惜しくも2着はスダホークであった。

その次の週はいよいよスワンステークスと天皇賞。
ニホンピロウィナーが天皇賞参戦の為に本命不在の中、人気はG 1馬コーリンオーと女傑シャダイソフィア。
そして重賞連勝中のスターライトブルーであった。

スターライトブルーはマイルチャンピオンシップに向けての調整レース。
調整とは言え、負けれるレースではない。
ただ前回のハイペースの叩き合いでエルプスに競り勝った事で、どことなく馬にも逞しさが増した感があった。

パドックでも青毛の馬体が輝き、キビキビと歩く。
名前の由来となった額の星のような白斑も鮮やかさを増している。
そして、ここに来ての体重増・・・
充実している証拠だった。

「スターライトブルーはいい馬だね。馬体が輝いているように見える」
「ああ、それはどうも…あらっ?」

背後から声をかけられて樹里は戸惑いながらも頭を下げる。
その男性は、近年の日本競馬の生産界の中心人物でもある吉野善太だった。
彼は同じレースに出走するシャダイソフィアの馬主でもある、が。

明日の天皇賞には代表を務める牧場の生産馬、ギャロップダイナが出走する。
ともに前日は京都にいる…少し不思議な感覚ではある。

フルダブルガーベラは彼の牧場一つで生産された産駒であり、その血統構成や身体のバランスはエリックも褒めていたぐらいだ。
そんな大牧場のオーナーブリーダーと居るのに流石の樹里も緊張してしまう。

「パーソロンは残念だねぇ」
「そうですね。残念です」

吉野の言葉に樹里も返す。
スターライトブルーの父であるパーソロンが死んだのは今月・・・
特にシンボリルドルフが活躍していただけに、その訃報に馬産地は大きなショックを受けていた。
ただパーソロンは吉野の牧場とはライバル関係の牧場の馬だ。
それでも惜しむ吉野の顔を見ると、やはり良いライバルを喪った悲しみもあるのだろう。

「私達も使わせて頂いていますが、リアルシャダイとディクタスは良い馬ですよね」
「ええ、特にリアルシャダイは自慢の馬ですよ」

リアルシャダイは吉野が惚れ込んで欧州で走らせた後に種牡馬として日本に輸入した馬だ。
ノーザンテーストと並ぶ牧場の代表馬になると吉野自身が見込んでいるようだ。

そして、シャダイソフィアも吉野にとって惚れ込んだ馬の一頭だ。

「綺麗な馬だ・・・特にトモが素晴らしい」
「ええ、自慢の馬なのですよ」

今回、京都競馬場が見たいとエリックが来ていた。
そのエリックの言葉に吉野が嬉しそうな表情を見せる。
それはまるで愛娘を見るような表情だった。

「ジュリ、ああ言う馬を買うといい・・・凄い子供を産むよ、あの馬は」

どうやら気に入ったようなエリックの顔。
知的でクールなエリックは良い馬を見ると子供のような顔をする。
それがどことなく可愛く見える。

「フルダブルガーベラは吉野さんの牧場の生産馬よ」
「やはりそうか!・・・日本にも素晴らしい馬産家かいるね!」
「いやいや、褒めて頂いて嬉しいね」

馬バカと言うのか何と言うのか、エリックと吉野は年齢こそ親子以上に違うが、何となく話が合いそうであった。

パドックで制止命令がかかり、出走各馬のところに騎手が集まり騎乗する。

「そう言えばジュリの馬にはよく彼女が乗ってるね」
「初めて栗東を訪れた時に紹介されたの。それ以来ずっと彼女を起用し続けてるわ」

スターライトブルーに跨る澪の姿を見ながら会話する樹里とエリック。

「女性ジョッキーに何か思うところでもあるの?」
「ああ、姉貴も昔は騎手を目指していたからね」

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