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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 73

8頭立ての小頭数。
もともと頭数が集まりにくい長距離戦だし今回はシロノライデンの1強のようなムードすらあったせいでもある。
それに夏に力をつけてきた上がり馬的存在もいない。

「ここは勝たなきゃいけないレースだけど、ペースが落ち着くとまずいよなぁ」

秋の王道路線はルドルフの出来次第、さらにミスターシービーの引退もあって混沌としていた。

そんなレースがスタートする。
シロノライデンはいつものようにゆっくりとしたスタート。
最後方に位置する。

馬群はさほど離れず、やはり澪が思った通りペースは早くない。
だが、そこまで遅い訳でも無かった。

ペースこそ落ち着いたものの、8頭と少ない為に神経質にならなくてもいいのはある。
シロノライデンの少し前にマサヒコボーイとキョウワサンダー。
その更に前にマルブツサーペンとシンブラウン。
スズカコバンはいつもより前めの競馬でヤマノシラギクと共に先頭でレースを引っ張っていた。

淡々と進むレースは1000mを過ぎる。
平均よりやや遅いペースにキョウワサンダーが掛かってしまい前に行く。
シロノライデンは落ち着いたものだが、マサヒコボーイの方は若干なだめる様子だった。
シンブラウンやエーコーフレンチもキョウワサンダーに釣られる感じで馬群がバラけ始めた。

澪はまだ動かない。
と言うか、シロノライデンが動じていない。
春より更に充実しているのは調教で乗って理解はしていたが、レースで乗ると更にそれを実感する。

重戦車はじっくり構えて最後のスパートを待っている。
以前は追っても動かない馬が追うタイミングを理解してくれている。
なので焦る必要はない。

先頭、逃げるヤマノシラギク。
スズカコバンは変わらずそれについていく。
道中動いた組の方が若干脚色が鈍くなり、キョウワサンダーが脱落。
その外から動くシロノライデン。

4コーナー。
ヤマノシラギクが完全に抜け出しスズカコバンが続く。
だが、追い上げるシロノライデンまで差はそこまで無い。

直線を向いた時も澪は追い出さない。
必死に逃げるヤマノシラギク。
追い縋るスズカコバン。
その2頭までは5馬身程。
澪の鞭が振り下ろされたのは、直線も半ばになってからだった。

大跳びで加速がゆっくりだったシロノライデン。
だが、坂路調教で力強さが増し、特に後肢の蹴る力が大幅に増していた。
故に重戦車のようなパワフルな脚を使えるようになり、直線半ばからでも5馬身なら充分だった。

唸るような豪脚で追い込むシロノライデン。
残り100mでスズカコバンを抜き去る。
前を走るヤマノシラギクはまだ脚色が衰えず1馬身前。
だが、唸る豪脚は一瞬にして差を詰めたのだ。

そして図ったようにゴール前で首一つ抜け出して差し切り勝ち。
着差以上の完勝といった具合で、澪も余裕たっぷりの表情で引き上げる。

「うーん、うまくやれたと思ったんだけどなぁ」
「"彼女”もよく頑張ってると思いますよ」
「ハハハ、もう余裕と風格があるねぇキミも」

ヤマノシラギク鞍上の清瀬とそんな会話を交わす澪。
中央のすべての競馬場で出走経験のあるベテラン牝馬もシロノライデンにはかなわなかった。

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