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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 71

さすがはGTをすでに2勝しているように風格がある。
オークスは大敗しているが血統がマグニテュード産駒というスピード血統なだけあって距離が長かったという見方が大半だった。
陣営は「2000までなら大丈夫」と言っており、この後は秋華賞に向かう予定らしい。

スターライトブルーも状態は申し分なかった。
走りたくてしょうがないくらいの気持ちの前向きさはいつもと一緒だ。

そんな試練のレースが始まる。

スタートダッシュは相変わらず抜群。
一気に先頭に躍り出るスターライトブルー。
だが、今日はいつもと違う。
そのスタートダッシュに並びかける馬がいたのだ。

逃げるスターライトブルーの内側。
半馬身の差でエルプスがいた。
2頭は馬体を合わす距離で走り、エルプスが加速して追い越さんとする。
すると勝手にスターライトブルーも加速。
2頭がそれぞれ負けるものかとハナ争いを始めた。

序盤で3番手とは10馬身差・・・
スプリント戦以上のハイペースとなった。
騎手の気持ちは兎も角、どちらの馬も潰れるのを覚悟で先頭争いを繰り広げる。

澪から見るエルプス。
小柄な馬だが、鬼気迫る勢いでハナを取ろうとしている。
その根性は素晴らしいと素直に思う。
だが、スターライトブルーも負ける気が無い。
先頭を走らないと気が済まない馬が、並びかけられてヒートアップしていた。
もうこうなれば澪の言う事なんて聞かない。
後は澪の方で調整してやらないといけないが、今の所少し内側を走るエルプスの方がロスは少ない。

ここで引き下がってしまえばあとはズルズル後退するだけだ。
仁藤からの指示も「競り合ってバテたらしょうがない」と言われているから、もう腹を括る。

エルプスの鞍上、井藤が澪の方をチラッと見やる。

ここで焦りを見せたら負けだ。澪はそう悟った。

2頭はそのまま並んで最後の直線に入る。
後続はまだ遥か後ろ。
先にエルプスに鞭が入る。

ググッとエルプスが伸びて、先頭に立つ。
まだこれで余力があったとは恐れ入ると澪も震えるぐらいだった。
だが、スターライトブルーとて負けてはいない。
澪の鞭に反応し、再び先頭を奪い返す。

その2頭の前に中山の坂。
坂など無いと言わんばかりに駆け上がる2頭。
再びの鞭にエルプスが差し返し、澪の鞭にスターライトブルーが差し返す。

残り100m・・・
エルプスが苦しさに口を割る。
だが、気迫で食らいつく。
スターライトブルーも苦しさによれる。
だが負けじとばかりに走り続ける。
澪も井藤も互いのパートナーを信じてひたすら追う。
後続すら見る余裕は2人には無かった。

そして、もつれあったままゴール。
後続も必死に追い上げてきたが、その差が5馬身以上埋まる事は無かったのだ。

着順が上がる。
クビ差の決着。
疲れ切った相棒を労う澪と井藤の前で着順が確定した。

「いやぁ、いい馬だね」
「そっちこそ…さすがはGT馬ですね」
「控えてくれと思ってたけど…」
「抑えようとしても我慢してくれないんですよ、この仔」
「威勢がいいね」

今後に期待の持てる結果にはなったが、消耗も激しかった。

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