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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 70

心配になるが、かなりリラックスして走っているのも事実。
これだけ力を抜いて走れるのは、距離延長もできるし、何よりレースをよく知っていると言う事なんだろう。
この馬もオーナーは白幡樹里だと聞いているが、今年の新馬の完成度はここまで3頭全てが高い。
良い馬を持つのもいいオーナーの条件だと思うし、そんな馬を任せてくれるオーナーだからこそいい騎乗したいと思う澪だった。

そして3コーナー。
コーナリングも上手で、手前の変え方も上手い。
トリッキーな中山コースだが、この馬にとって何の問題も無いだろう。
後は、後半どれだけ脚を使えるかだ。
4コーナーも位置取りは変えず馬がバラけるのを待つ。
以前なら外に出しがちの澪だったが、今は馬群を冷静に見れる余裕があった。
そして澪の予想通りレースに慣れていない新馬達は最終コーナーでバラけていった。

そのバラけていく内側を澪はラモーヌを走らす。
直線入った所では中団やや後ろ。
しかし澪の前はガラ空きになっていたのだ。

もう「ここを通ってください」と言わんばかりの展開。
澪はすかさず追い出しの体勢に入る、が

「!?」

ラモーヌが自分からエンジンをかけた。
前方との差をあっという間に詰める。

(この子、凄い!)

馬場の外目を通って先頭争いをしていた馬が2頭いたが、ラモーヌはその2頭を内側からあっさり交わし、先頭でゴール板を駆け抜けたのだ。

その勝利に奥原は笑みが自然とこぼれる。
勿論、勝った事は嬉しい。
ただ勝ったのではなく、まさしく完勝だったからだ。

「よく乗ったもんだね」

スタートから見ていていたが、澪のスムーズで柔らかい乗り方は印象が良かった。
馬を気持ちよく走らせてるのもその乗り方故と思っていた。


一通り終わった所で満面の笑みの奥原が樹里の所に来た。

「先生、ありがとうございます」
「いえいえ、こんな馬を任せて頂いてありがとうございます」

樹里としても期待していた馬が期待通りに勝っただけに喜びが大きい。

「任せて貰ったからには、この馬でクラシックを奪りますよ!」
「はい、期待していますわ」

デビュー戦で明言。
笑われるかもしれないが、大言壮語したくなるぐらい奥原はリュウノラモーヌに惚れ込んでいたのだ。

これで樹里の所有新馬は3頭がデビュー。
非常に幸先のよいスタートだった。
そしてスターライトブルーのレース。
京成杯オータムハンデが始まる。

人気はスターライトブルーとエルプス、タカラスチールの3頭。
3歳の快足馬達である。

その中でも桜花賞を勝ったエルプスのスピードはメンバーの中でも断然抜けているという見方。
夏休みを経て秋初戦だが仕上がりは万全に見える。
エルプスとの対決で勝利のないタカラスチールだが実力は十分。ただハンデがエルプスと同じことに陣営はいささか不満だった様子。

重賞を3勝しているスターライトブルーも斤量は同じ。
7歳のベテラン、ローラーキングが一番重いハンデを背負う。

今回はスターライトブルーにとって最大の試練であった。
エルプス陣営からは既に『ハナを譲る気は無い』と先頭争い宣言が出ていた。
今まで単騎逃げしかした事が無かったスターライトブルーにとって、それは初めての事だった。

それに対して仁藤調教師からは『ついてこれるならどうぞ』と受けて立つコメント。
3歳を代表する快足馬同士のガチンコ勝負に、G3ながら異様な程の盛り上がりを見せていた。

澪としてはスターライトブルーが言う事を聞くようになったとは言え、競かけられる事を嫌う性格故に行かざるを得ない覚悟はしていた。
だからむしろエルプスより後ろから来る馬に怖さを感じていた。
特に同じ3歳馬のビックパッサーの差し脚とかに足元を掬われる事が怖い・・・
先頭争いをしつつ、どこで脚を温存するかが最大のポイントだった。

パドックでもスターライトブルーの充実ぶりは目を引くが、エルプスの馬体の素晴らしさも負けてはいない。
非常に小柄な馬だが、G1馬らしい風格が感じられる。

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