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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 66

骨折明けだが、調教は十分できていて仕上がりも問題ない。
3歳で重賞2勝の実力もあってハンデは少々見込まれた感じはある。
そこは陣営も折り込み済みである。

澪にとっては荒ぶる魂をレース中にどこまでコントロールできるかが課題になっていた。
牧場から帰って来た後の調教では別馬のように感じたが調教とレースは別物である。

スタートはやはり超絶に上手い。
スターライトブルーに人語が話せるならコツを聞いてみたいぐらい上手い。
それとゼロダッシュの早さで、スタート直後で2馬身ぐらいちぎれるのがこの馬の持ち味だ。

何時もならここから止まらない。
走るのが好きで、走りたくてたまらない馬だ。
喜びを爆発させてそのまま駆けていくのが何時ものパターンだ。
なので澪が恐る恐る手綱を引いてみると・・・
スターライトブルーが速度を緩めたのだ。

思わず鞍上で感動してしまう。
あのスターライトブルーが言う事を聞いたのだ。
これは大きな進展だった。

やはりそれでも先頭に立ったスターライトブルーの行き足についてこれる馬がいなかった為に、他は無理せず追走を選ぶ。
今回はメンバーに恵まれた感があり、競りかけてくる相手もいないから自分のレースができる。

ラップはやや早め。
ただ問題のある速度ではない。
以前の暴走ペースではないので、このやや早めが良いペースなんだろうと澪は思っていた。
2番手まで3馬身差だが、これはスターライトブルーが飛ばしてると言うより、2番手が控えてると言う所だ。

以前のように鞍上と喧嘩してまで行こうとするのがなくなり、気持ちよく逃げているのがわかる。

(あー、いい子になったよブーちゃん)

軽快な逃げ足は4コーナー、さらに直線になっても止まる気配はない。
後続各馬が動き出すがまだまだリードはある。
中京は開催最終週となって、内側の馬場が傷んでいるがスターライトブルーには全く心配のいらないものだった。

直線に入っても楽走。
そのまま差は埋まらず3馬身差でゴール。
本気で追っていない状況でこの差は大きかった。

スターライトブルーの復帰戦は幸先の良いものになった。
これで重賞3勝目。
自走は京成杯オータムハンデでマイルチャンピオンシップに向けてのステップとする事にしたのだった。


そして、シロノライデンが秋に向けて涼風ファームで休養するのと入れ替わりに、関東の奥原厩舎に2頭、関西の仁藤厩舎に1頭の2歳馬が入厩していた。

奥原厩舎に入厩した1頭が牡馬であるシーテイストの83・・・
ファバージの産駒でウィンドフォール。
授かり物と言う意味を持つ。

「凄いよね・・・それによく牧場で調教されてきているね」

奥原が関心したような声を上げる。
もう1頭預かった牝馬の方が本命であったが、この馬も間違いなく来年のクラシックで戦える自信があった。

「凄いですよっ、この子!」

調教をつけてきた奥原厩舎の調教助手、篠原愛美も興奮気味で降りてきた。
まだ二十代前半だが、既に奥原厩舎の信頼できる調教助手になっていた。

もともと騎手志望だっただけあってその腕前もベテランから一目置かれるほどの彼女。
そんな彼女も興奮させるのがもう1頭入厩したモガミ産駒の牝馬―リュウノラモーヌ。
シロノヒリュウの83である。
ラモーヌというのはアルプス山脈の峰の一つの名前であり、イギリス留学中の奈帆が母の名の一部と組み合わせて名付けたのだ。

「これは、ホントにいい馬だな…アイツに乗せてやりたかった」

奥原の言う「アイツ」とは、ダービーの2週間後にガンでこの世を去った親友の騎手・高島のことである。

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