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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 64

「何て事したの!」

宝塚記念から少し経って、子供の面会の後に祐志に詰め寄る樹里。

「これは俺の不手際だ・・・陣営にかなり発破をかけ過ぎた」

祐志の話によると、ステートジャガーはかなり調子を落としていたらしく、祐志がかなり強く厩舎側に宝塚記念までに間に合わせろと言ったらしい。
それで焦った厩舎サイドか佐原の競馬スタッフ関係者の誰かが、カフェインを使用して興奮させて調子を上げようとしたようだ。

「警察の捜査が入るわよ」
「もう事情聴取を受けた」

そう言う祐志。
彼からすれば佐原に飛び火だけはさせれないと言うのはあるだろう。
確か、宝塚記念に佐原が来て無かったのは、事前に何か勘付いていたのかもしれない。

「そこでだ・・・佐原のパーティー券を買って欲しい」
「資金が必要なのね・・・分かったわ」

裏金を用立てしろと言われれば躊躇した樹里だが、パーティー券なら真っ当な政治資金として落とせる。
佐原が自分の裏金で事を収めるに当たり足りない分を表で補填すると言う祐志なりの責任の取り方なんだろう。

「奥様、嫉妬しない?」
「既にしているさ」

麗奈の顔が浮かんだ樹里。
だが、こんなピンチにも祐志は何時もの飄々とした感じになっていた。
本当に実に食えない男だが、健三の時もそうだが、きっと佐原にも信頼されているのだろう。
そう言う意味では有能な男なのだ。

「アイツ、嫉妬してあの女に勝ちたいって俺の上で腰を振りながら泣いていたさ」

前の妻、しかもそれを愛人のようにしているのを前にそんな事を堂々と言ってのける。
実にふてぶてしい。
これは樹里の予想だが、カフェイン混ぜたのは麗奈の部下な気もしていた。

「私は、今回の件であなたに貸しを作れたので良しとするわ」

即答で祐志を助ける事にした樹里。
その判断は間違っていると思う。
だが、その間違いで正解だとも思っている。

「助かったよ・・・だから今日は可愛がってやる」
「全くっ!調子いいんだから!」

ニヤニヤと樹里を抱き寄せる祐志。
樹里は溜息混じりだが、頬が綻んでしまうのを止めれない。



夏競馬。
樹里は紗英と娘たちを連れて中京に来ていた。
スターライトブルーの復帰戦、それにフルダブルガーベラのデビュー戦という2つの大事なレースがある。

調教での走りの良さからダートで良さそうだという陣営の判断もあり、まずはダート1400でのデビューとなる。

「ちょっと距離が短いかなぁ」
「スタートダッシュがいいから何とかなるかも?」

紗英と共にパドックを見ながら喋る樹里。
フルダブルガーベラは栗毛の中でも黄金に近い雄花栗毛と言われる垢抜けた馬体をしていて、まさに名前の通り八重咲きの黄色いガーベラのような豪華さがあった。
育成ではラルフが『お転婆娘』と呼ぶぐらいの暴れん坊だったのだが、彼の見事な技術で制御されていた。
ただ荒々しい気性は健在で、パドックでも2人の厩務員を引き摺らんばかりの様子を見せていた。

「余りお近づきになりたく無い美人さんですね・・・」
「ふふ・・・仁藤先生もガーベラと言うより薔薇だっておっしゃってましたね」

パドックでも荒ぶるフルダブルガーベラを見て首を竦める紗英と微笑んでその様子を見る樹里。
とりあえず色々と上手く行ってるので機嫌がいい。
ステートジャガー事件に関しても警察は入ったものの、佐原家にはダメージが行かず、賞金没収と調教師の処分で終わりそうな雰囲気だった。
その調教師も聞けば佐原に感謝してると言ってる事から、そちらから保証でもあったのだろう。

制止命令がかかる。
歩みを止めたフルダブルガーベラだが、その場で首を上下させていてまだエキサイトしている様子。
夏の暑さのせいもあってか少し汗も目立つ。

パドックの奥から騎手たちが姿を現し騎乗馬の傍までやってくる。
フルダブルガーベラの鞍上はもちろん澪。
調教から騎乗してスピードがあるのは把握している。

「GTも勝って、だいぶ顔つきも変わってきたね」

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