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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 63

まず仕掛けたのはステートジャガー。
ウインザーノットに並びかける。
だがウインザーノットもやられたままでは無い。
2頭並んでの叩き合いで阪神の坂を登っていく。

その後ろからスズカコバン。
更にサクラガイセンがそれぞれ外から強襲する。
坂の半ばで先頭2頭に並びかけた。

スタンドからは大きな歓声。
1頭、後ろから凄まじい勢いの馬が上がってきた。
シロノライデンだ。

直線に入った時はまだ最後方。
だが、直線入ってすぐに澪の手が動く。
少し開いた内側を強襲していく。
中央でも中山と並ぶ急坂を誇る阪神の直線。
日々坂路で鍛えるシロノライデンにとって、この程度の坂は何の問題も無い。
坂など無いかのような加速ぶりで前の馬に襲い掛かる。

「嘘だろっ?!」

一瞬で交わされた騎手がメジロトーマスの鞍上で叫ぶ。
脚が鈍ったメジロトーマスとは言え、こんなアッサリと抜かされるとは想像していなかった。
そのまま少し前にいたヤマノシラギクも一瞬で交わしていく重戦車。
まるで自分の馬が後ろに走っているのかと誤解するぐらい、内ラチ沿いを疾走するシロノライデンの脚は凄まじかった。

その大きな馬体が先頭争いの集団にみるみるうちに近づいていく。

スズカコバンが一歩抜け。
追うサクラガイセン。
ウインザーノットも必死で粘る。
ステートジャガーは脚が上がった。

その4頭を内から一気にぶっこ抜いたところがゴール板の手前だった。

「やった!」
ゴールの瞬間、澪は小さくガッツポーズする。

「やるじゃねーか嬢ちゃん!」
ステートジャガー鞍上の田端が澪を祝福する。

「ありがとうございます!」

満面の笑みの澪。
初めてのG 1制覇・・・
しかもそれは史上最年少や女性騎手初と言う称号までついてくるものだった。
そして、その歴史を刻んだのがシロノライデンであった事に誇りを持てた澪だったのだ。


馬主席でも大いに祝福された樹里。
そんな樹里に1人の女性が近づいてくる。

「おめでとうございます、白幡さん」
「ありがとうございます、佐原さん」

それが誰かはよく分かっている。
佐原祐志の現妻である佐原麗奈だ。

年齢は二十代前半ぐらいだったかと聞いている。
可愛らしく可憐な印象で、男から見ると保護欲を掻き立てられるタイプだろう。
だが、離婚騒動の時に中々に強かな女である事は樹里も身をもって知っている。
その彼女が微笑んで祝福してくれたのだが、目は全く笑っていない。

「ステートジャガーも良い走りでしたね」
「ええ・・・夫が自信を持って選んでくれましたの・・・わたくしも身重なもので、何も出来ずにいたのですが」

樹里の嫉妬心を煽るような家族円満をあざとくアピールしてくる麗奈。

樹里だってまだ子供は欲しいだけに、麗奈の妊娠はちょっとショックを受ける。
特につい先日、涼風ファームの女達が全員妊娠したと聞いたから余計にだ。

まあそれは予想できた事だから驚きは無い。
ただ、幸子の妊娠は予想外と言うか、本人も女として終わっていたと思っていたから狼狽していたようだ。
そんな閉経していたと思っていた女すら復活させてしまうエリックの性豪ぶりに驚くしかないが、まだ子供が欲しいが事情が事情だけに産めない樹里にとってはショックでしかない。

それを知ってか知らずか妊娠アピールの麗奈。
そう言えば男の子産んだ時も、それでアピールしていたなと思うと、的確に樹里にダメージが行く事をしてくるなと逆に感心してしまう。
タイプ的には決して嫌いじゃないのだが、麗奈自身は樹里に嫌われようとしている風がある。
だからそれを顔に出す訳にはいかない。

「まあ、妊娠おめでとうございます・・・ご自愛くださいね」
「ありがとうございます・・・きっと次も男の子だと思ってますわ」

笑顔での応酬。
樹里もこう言うやり取りは嫌いではない。
むしろ今では女の戦い方とすら思っていた。

シロノライデンはこれで夏休みとなる。
秋は天皇賞に直行するかひと叩き入れるかを調整しながら検討する、と仁藤が語っていた。

涼風ファームにとっては二重の喜びとなる。
樹里は真奈に身体に気を付けながらお互い頑張りましょう、とエールを送った。

ところが宝塚記念の後、思いもしない物騒な話が沸き上がる。
4着だったステートジャガーから禁止薬物であるカフェインが検出されたのだ。

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