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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 62

その宝塚記念。
頭数こそ少ないものの強力なメンバーが集まる予定だ。

残念ながらミスターシービーは脚もとの不安が出たということで休養に入るが、春の天皇賞の上位組はシービーを除けば集結する。
皇帝シンボリルドルフ、重戦車シロノライデン、それにスズカコバン、サクラガイセン。

長距離では分が悪かったミスタールマンもここなら軽快な逃げを見せられるか。
さらには大阪杯を勝ったステートジャガー。

そして最大のダークホースがパーソロン産駒で凱旋門賞を勝った女傑サンサンを母に持つ良血馬・ウインザーノットだ。

ここまでの良血はそうはいないだろうと言う良血馬であったが、怪我もあって中々勝ちきれずにここまで来た馬だ。
だが、その潜在的なスピード能力は誰もが大きなレースの勝利を期待するだけはあった。


そんな宝塚記念の直前。
衝撃的な事件が起こる。
シンボリルドルフの出走取り消しであった。

天皇賞の激闘の後、不調に陥っていたシンボリルドルフ。
その調子は戻る所か益々悪化し、最終調整での結果を元に出走取り消しが決まったのだ。
これには誰もが衝撃を受ける結果となった。

澪も有力馬に乗るだけに記者からインタビューがあったが、むしろ戸惑いしかなく『残念です』と言うしかない。
騎手の中には記者に逆質問する者もいたが、殆ど誰もが状況が分からず混乱するばかりだった。

それは馬主達もそうで、宝塚記念当日は馬主席も異様な雰囲気だったのだ。

「もしかしたら勝てるチャンスが来たのかもしれないけど・・・素直に喜べないわ」
「そうね・・・軽い故障なら良いのだけど」

戸惑いを見せる紗英に樹里もそう返すぐらいしかできない。

シンボリルドルフの出走取り消しによってレースは11頭立て、シロノライデンは押し出されるような形で単勝1番人気に推されることとなる。
ただし後に続くサクラガイセン、スズカコバン、それにウインザーノットあたりとはそれほど差はついていない。

シロノライデン鞍上の澪にはそんな1番人気でのプレッシャーは皆無であった。
むしろ彼女もシンボリルドルフとの対決が流れたことを残念に思っていた。

シロノライデンにとってはキャリアの中で最も距離の短いレースで、ステイヤーであるこの馬にとって短か過ぎると言われていた。
競馬新聞の予想でもその事が取り上げられているが、その事も澪の不安材料にはならない。
むしろ、今のシロノライデンはこの距離で生きる脚を持っていると思っていたのだ。


そんな澪を背に宝塚記念が始まる。
跳びの大きなシロノライデンは、ゆっくりとスタートを切るのは何時も通り。
予定通り最後方に位置する。

レースを引っ張るのは良血馬ウインザーノット。
自慢の快速で先頭に立った。
有力馬は総じて後ろに位置していた。
これは恐らくシンボリルドルフが居た時の戦術以上に、更に後方に位置するシロノライデンを意識したものであるのは明白だった。
先行力のあるステートジャガーすら控え目に位置するので、序盤はウインザーノットの単騎逃げで進んで行った。

澪は馬群の最後方。
内ラチ沿いにシロノライデンを走らせる。
ルドルフが居ない以上、自分のレースをするしかない。

軽快に飛ばすウインザーノット。
序盤は落ち着いていたレース展開は第3コーナー辺りから徐々に慌ただしくなっていく。

まずスナークアローが動き、次いでミスタールマンも差を詰める。
ステートジャガーもじわじわスパートを開始し、スズカコバンも仕掛けた。
依然シロノライデンは後方で泰然と構える。

ウインザーノットもまだ余力はある。
馬群が凝縮され、最後の直線の攻防に突入する。

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