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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 7

「もちろんです。彼女の腕が無かったら勝ちまではいきませんでしたから」

この勝利にはもちろん涼風ファームの3人も大喜びだった。
幸子は感極まり、真奈は従業員と抱き合って大はしゃぎ。奈帆は安どのため息とやれやれ、といった笑顔でそんな母と祖母を眺めていたという。

レース翌日、樹里と真奈は電話で話をした。

「ライデンは菊花賞を目標にしていくと仁藤先生が仰ってました」
「この先もうまくいってほしいですね」

ところで、と真奈が話題を変える。

「もうすぐ種付けのシーズンなんです。樹里さんも何か意見があったら、ウチの繁殖のお相手を…」

「はい、その事を含めて近々伺います」

債務整理を初めとした手続きが全て終わり、涼風ファームの経営権は樹里に移っていた。
だが、樹里だけで全て牧場の事を決めてしまうには知識が足りないので、彼女達は引き続き任せている状況だ。

そして、日高に向かうまでも樹里はあれこれとこなしながらであった。
牧場事務所と馬房の改装。
これは空いてる土地はいくらでもあるから移築して新しくする。
そして元あった位置には休養馬の為の施設を作る予定にしている。
つまり、オーナーブリーダーとしての拠点にできるように改装していく訳だ。

今回、改装まで思い切ったのは、叔父が2頭程繁殖牝馬を仕入れてきてくれたからだ。

一頭は未出走のまま引退した4歳牝馬。
セントクレスピンの晩年の産駒で祖母はシラオキ。
母もこの馬も活躍してないのにも関わらず、祖母が名牝とあって期待の良血と言える。
そしてもう一頭は長らく無事に走り終えた7歳牝馬。
ダイアトム産駒で、こちらは遡ると日本の基礎繁殖牝馬の一頭、星旗に至る。
どちらも以前の涼風ファームでは考えられないランクの繁殖牝馬だった。

2頭の繁殖牝馬はすでに涼風ファームに移動していて、のんびりと放牧地で過ごしている。
奈帆がお世話をしているようで彼女にすごく懐いているらしい。

「新しい家族が増えたみたいで奈帆もすごく楽しそうなんです」
「奈帆ちゃんは素質がありそうですねぇ」

そんな風に真奈と話す樹里だったが、牧場の事だけでなくもう一つ片付けておかなければならない事があった。

真奈が奈帆と共に馬房に向かった時に幸子にこの話を切り出した。

「お願いがあるのです・・・父との関係について色々伺いたいのです」
「そうですね、オーナーにはお嬢様だからこそ話さねばならないと思ってます」

それは20年も前の話だった。
母が亡くなった頃、健三は気丈に振る舞ってはいたが見る影もないぐらい痩せてしまっていた時期がある。
樹里も母の死はショックだったが、父のその姿もショックであった。

「そこで先代様をお慰めする為に関係を持ったのが最初です」

ある日を境に父は回復していき、母がいないながらも白幡家に日常が戻ってきた。
それにはそんな事があったからだろう。
当時、桜木家とは友達付き合いはあったものの、まだ駆け出し経営者の健三は馬主すらない。
それが馬主になる事になったのも幸子の存在があったからかもしれない。

「お嬢様には恨まれて当然だと思います」
「いえ、亡くなられた旦那様には申し訳ないですが・・・私達はそれで助けられたので」

恨む気持ちは一切湧かなかった。
むしろ潰れる寸前の父は多分それで救われたのだし、むしろ幸子の亡き夫に申し訳ないとすら思う。

「こちらも、先代様には助けて頂きましたし・・・」

少し幸子が頬を赤らめる。
50前の幸子が艶かしく見えて樹里はドキッとしてしまう。

「女としての悦びを教えて頂きました」

それは何となく分かる。
樹里にも身に覚えがあったからだ。

樹里の元夫は大学からの付き合いで、樹里の初体験の相手である。
だが、彼の方は相当な女性経験があったようで、樹里は瞬く間に彼の虜になってしまった。
女としての悦びを教え込まれ、彼の虜になった樹里は大学卒業と共に結婚・・・
初めは難色を示していた健三だったが、樹里の中に子が宿っていると知ると渋々認めた経緯だった。

その後、樹里は夫婦生活が上手く行ってると思っていた。
夜の夫婦生活は頻繁にあったし、長女に続いて次女も生まれた。
だから夫に愛人が居ると知った時はショックだったぐらいだ。

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