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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 58

ゴール後、装鞍所へ引き上げていく際のクールダウン。
悔しさは感じる澪だったが、菊花賞で着けられた着差をあと一歩のところまで詰めることができた。

ウイニングランに向かうシンボリルドルフを遠目に見る。
今はあの姿に屈服させられるようなことはなかった。

「うーん、あと少しだったのになー」
「まあまあ、ルドルフにあそこまで迫れたんだから大したもんだよ」

悔しがる紗英の隣で樹里は笑顔を見せていた。

G1は取れなかったものの、これは決して悲観する結果ではない。
そしてシロノライデンの次走は、距離短縮に不安があるものの宝塚記念と言う事になったのだ。


天皇賞から暫く。
涼風ファームにも種付けシーズンが近づいてきた。

「兄貴・・・厳しすぎやしないか?」

溜息混じりのヘンリー。
その視線の先には縛られたままバイブを2つの穴に装着されたまま鞭打ちされて気絶した真奈がいた。

「交配相手案があるから出させて欲しいと言うからやらせたら・・・酷い結果だ・・・上辺でしか見ていないではないか」

不機嫌な様子のエリック。
ヘンリーもエリックのテクで調教用の鞭が跡も残らない事を知っているが、何と言うか真奈にはかなり厳しいと思っていた。

「彼女の知識では正解なんて出ないだろ?」
「その通りだ・・・だから馬の事等考えず、俺に可愛がられて子を沢山産めばいいのだ」

エリックが相当真奈を愛してるのはヘンリーも分かっている。
そして愛故にキツいのも。

「血統だけでなく馬体や馬齢、相性等・・・多くの要素を見ないと交配は駄目だ・・・全兄弟ですら同じ結果にならない事はファロスとフェアウェイで実証されている事だ」

エリックの言うファロスとフェアウェイ。
この全兄弟は皮肉な程対照的な運命を辿った2頭だった。

フェアウェイはイギリスで一流の成績を残した競走馬であり、種牡馬としてもイギリスのリーディングに何度も輝いた名馬であった。
その兄ファロスはフェアウェイの全兄弟であるが、競争成績では弟に大きく劣り、種牡馬としても早期に見切られフランスに売却されていた。
だが、現在・・・
競馬界を席巻するのはファロスの子孫達。
ファロスからは近代競馬の祖とも言えるネアルコと言う最適解が出たのだが、フェアウェイは自身を超える最適解を出せずに先細りしていた。
つまり、血統が同じでも結果が同じにならないのが競馬と言うものだった。

故に今回の種付けでは事前にエリックとヘンリーがスタリオンを回って実際に種牡馬を見ながら話し合っていた。

またラルフやジョンも彼らなりの視点で兄達に意見は言っている。
そんな中、真奈も案を出したのだが、それはエリックの納得できるものではなかったのだ。
それで折檻した訳だが、ヘンリーからすれば『出来ないのが分かってるんだから折檻しなくても』と言う事である。

前の年に真奈が中心に決めて生まれた4頭の子馬。
これはエリック達から見ても悪いレベルでは無い。
ヘンリーも研究者やってただけに、この母馬からこのレベルなら及第点出しても良い。
まず折檻はあり得ない。
ただエリックはもっと上のレベルを考えているし、自分達ならしない選択ではある。

今回、エリックが特に気に入った種牡馬がジュニアスとエンペリーである。
ジュニアスはボールドルーラーの系譜でアメリカでは勢いのある系統で、馬体のバランスと血統背景的にアキネバーとの交配が良いと考えていた。

エンペリーはオリオールの系統。
ハイペリオンに繋がる欧州血統である。
これはシーテイストと組み合わせてスピードと重厚さを合わせるつもりだ。

エンペリーはシンボリルドルフを生産したオーナーブリーダーが日本に導入した英国ダービー馬である。
真奈は気性難の傾向があると言ってこの馬を付けるのに渋ったのだが…

「ジュリにも来てもらって話を聞いて貰おうぜ、彼女が生まれてくる馬のオーナーになるんだから」
「まあ、そうだな」

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