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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 57

そんな会話の中、シロノライデンに跨った澪も今回は自信を持っていた。
相変わらずシンボリルドルフの存在感は圧倒的だ。
だが、そこに手が届きそうな・・・
背中がハッキリと見えているような気がしていたのだ。


ゲート入りは比較的スムーズ。
各馬一斉のスタート。

人気馬の大半が落ち着いたスタートで、ノムラムサシとナンシンエクセラーの人気薄2頭が先頭争い。
スズカコバンが中団の少し前、メジロモンスニーやルドルフがその後ろ、サクラガイセンがそれに続き、後方集団にはゴールドウェイ。
最後尾ではミスターシービーとホッカイペガサスが並んで走り、シロノライデンは更に後方と言った流れで一周目が始まった。

澪としては戦術通り。
ルドルフが日経賞のように先手を取る事は無いと思っていた通りの展開で、後はシービーを後方から見る位置に付けるのも予定通り。
究極のスタミナ勝負の舞台だ。
故にじっくりと走るつもりだ。

ルドルフもそうだろう。
いつもより後ろのポジションでじっとしている。
他の有力馬もそれは同じだった。

菊花賞では馬群に揉まれる競馬をしたルドルフだが、今回に関してはそのようなこともなさそうだった。
大外枠を引いたのがある意味で良かったのかもしれない。

2周目の坂を前にして前方が動き出す。
先行する人気薄の2頭にまずミスタールマンが並んでいく。
そのさらに外からスズカコバンが思い切って仕掛けていった。

勝負所の攻防にスタンドからはどよめき・・・
だが、そのどよめきを起こしたのは、ミスターシービーだった。

澪も後ろからそれを見ていた。
ミスターシービーの鞍上の手が動いたのを。
待ってましたとばかりに加速していくシービー。
それはかつての菊花賞を彷彿とさせるような禁じ手・・・
淀の坂を高速で上り下りしていったのだ。

仕掛けてきた・・・
澪の背中が泡立つ。
去年の澪ならここでシービーを捕まえに行ったかもしれない。
だが、澪は動かなかった。
シロノライデンも行くなら行けよとばかりにシービーの加速を見送る。

そして4コーナーでは既にシービーとスズカコバンが先頭争い。
ルドルフや有力馬が後ろに控えたまま直線へ向いていく。

各馬大きく広がった直線。
後ろの馬が先頭を捕まえようと猛追していく中、ミスターシービーが先頭に立った。
スタンドは割れんばかりの絶叫。
恐らくこれが皇帝を打ち負かさんとシービー陣営が繰り出した秘策であったのだろう。

馬場の真ん中を通って先頭に立つミスターシービー。
しかし最内のスズカコバンもしぶとく粘る。
2頭が離れながらも競り合う中、空いた内目のスペースからメジロモンスニー、サクラガイセンが差を詰め、外外を回りながらゴールドウェイ、それにシロノライデンも一気に末脚を弾けさせる。

だが・・・
皇帝がいた。

馬群中央を突破したシンボリルドルフは、並ぶ間も無くミスターシービーとスズカコバンを差し切る。
その切れ味鋭さに、ミスターシービーもここまでだった。

そして抜き去り先頭に立ち、ここから独走・・・
同じく追い上げてきたサクラガイセンだったが、その差は縮まるどころか少しずつ開いていく。

これぞ皇帝の独壇場。
残り100m・・・
勝利を疑うものはいなかった。

だが、そんなスタンド前を一頭の巨体が躍り出る。
大外から巨体を唸らせながら駆け上がるその馬は・・・
シロノライデンだった。
並いる馬を豪快に抜き去り、ルドルフに迫っていく。
残り50m・・・

逃げるルドルフ、追うライデン。
その差は一馬身。
更にグイグイと伸びていき、その差が詰まっていく。

そして・・・2頭が並んでゴールイン。
澪の頭が項垂れる。
後少し・・・後少し・・・
後少しが届かなかったのだ。

「・・・位置取りやったな」

ドカッと座り込んだ仁藤がため息混じりに言う。
大外を回ったロスが無ければあわやと言う所まで来た。
だがやはり、シンボリルドルフは強かったと言うしか無い。

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