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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 56

明け4歳、重賞を連勝して臨む大舞台では関西馬筆頭格の有力馬として注目されている。
人気を二分するのはシンボリルドルフとミスターシービー、2頭のクラシック三冠馬。
ルドルフは始動戦の日経賞を快勝し、シービーは大阪杯で敗れてなお強しの競馬。
大阪杯を制したステートジャガーは距離適性を考慮してここには出走しない。

シロノライデンの鞍上はもちろん澪。
シンボリルドルフとはあの菊花賞以来の対戦とあって気合も入る。

それ以外にも、サクラガイセン、シンブラウン、ゴールドウェイ、メジロモンスニー、ホッカイペガサス、スズカコバンと名うてのステイヤー達が集まってきた。
スピード化の波が押し寄せても、天皇賞は特別なレースなのだ。
全ての陣営の意気込みが違う。

調教終わりのシロノライデンの鞍上で澪が一息つく。
逸る気持ちを抑えるのが大変だった。
特に坂路コースが出来てシロノライデンをここで調教するようになってから特に、馬自身が走りたがっているだけに澪が気持ちを抑えないとオーバーペースとなる。
トラックコースだと余り走りたがっていなかった馬なのに不思議なものである。

「お疲れ様」

寛子が手綱を取りながら澪に声をかける。
やはり天皇賞直前となって、馬も澪もイレ込み気味だ。

「どうしよう・・・気持ちが抑えられないかも・・・」
「ふふ・・・彼は澪ちゃんを初めて女にしたのだからねぇ」

澪の頬が赤くなるのを見ながら寛子は困ったものねと呟く。
彼とは勿論、シンボリルドルフの事。
澪も成長したが、あの衝撃は中々忘れられないし、まだ心と身体に刻まれているようだった。

菊花賞は攻めに行ったが結果は完敗だった。
そしてレース後の威圧感ある振る舞い。
澪はあの姿だけで屈服させられてしまった感すらあった。

「澪ちゃん、この後時間あるかな」
「寛子さぁん…」

可愛いながらも完全にメスの一面を見せる澪に、寛子はやれやれと嘆息した。


そんな天皇賞がいよいよ始まる。
圧倒的な一番人気はシンボリルドルフ。
当日のパドックも一頭だけ雰囲気が違った。

そして雪辱に燃えるミスターシービー。
秋の天皇賞の時と同じぐらいの調子を取り戻しつつある様子が見えた。

この2度のマッチレースかと言われる天皇賞であったが、シロノライデンも決して雰囲気は負けていなかった。
解説者が『本格化を迎えましたね』と顔を綻ばせるぐらい馬体も艶やかで巨体が更に大きく見えていた。
同じくパドックを見る仁藤も自信を持って送り出していた。

「やっぱ、坂路はええね・・・馬体が見違えてるわ」
「せやね、戸川先生も試してるんやろ?」
「試しとるけどまだまだやね」

同じ関西の調教師、仲の良い戸川と仁藤はそんな話をしていた。
関西独特のノリで新しいものにすぐ飛び付く調教師も多く、栗東では坂路調教は広まりつつある。
だが、まだノウハウが無いから手探りの状態であり、戸川も試行錯誤の状態だ。
そんな中で仁藤が坂路で仕上げてきたシロノライデンに栗東の調教師達が注目していた。

人気を分け合う2頭、ルドルフとシービーは共に関東馬。
今の競馬界は関東馬優勢の時代であり、関西のホースマンたちはどうしたら勝てるのかを必死になって考えていた。
栗東トレセンの坂路導入もその一つだ。

シービーの下に続く人気勢はゴールドウェイ、メジロモンスニー、それにシロノライデン。いずれも関西馬。

「脚質の似てるシービーとどっちが先に動くかだね」
「ルドルフもどの程度の位置にいるかやな」

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