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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 51

そして、同じ月にある2つのG 1。
高松宮杯はニホンピロウィナーがまさかの大阪杯挑戦により混戦模様になる。
そんな中で優勝したのはマルタカストームだった。

そのニホンピロウィナーは大阪杯に挑戦するも、直線で失速して8着。
ミスターシービーが豪快な追い込みを見せるものの、優勝したのはステートジャガーだった。
勝たせたのは天才にして仕事人の田沢・・・
その名の通りの見事な完封劇だった。


その表彰式に満面の笑みで手綱を握る恰幅の良い壮年の男・・・
それが政界の大物、佐原であった。
隣にはその娘が並ぶ。

何故、馬主になって樹里と変わらないぐらいの彼がこの栄冠を勝ち取ったかと言うと・・・

「まあ、良い買い物だったな」

テレビを見ながら言う祐志。
地方馬だったステートジャガーを買い取り、中央で走らせたのは祐志だったのだ。
共にテレビを見ていた樹里も、祐志の相馬眼の確かさには驚くしかない。

「子馬と違って走っているから見分け易いな・・・佐原は幾らでも出すと言ってるし、いいのがいれば今後も買うつもりだ」

実に効率的なやり方だが、樹里としてはそれで勝っても嬉しいのかが分からない。
そう言えば、シロノライデンの父ダイコーターもダービー前にどうしてもダービーオーナーになりたい馬主が買ったと言う逸話があるが、それが正しい事とは思えない。

「納得できていない顔だな?・・・だが、地方でどれだけ活躍しても日陰だぞ・・・俺は名馬に相応しい舞台を用意してる訳だ」
「それはそうだけど・・・」

こんな考え方の合わなさが夫婦関係を続けられなかった理由の一つかもしれない。
しかし悔しい事に、その樹里のやり方も祐志に助けられてると言う事実もある。
スノーベリー牧場とエリック4兄弟と言う人脈は樹里では得れなかったものだ。

そしてステートジャガーも、地方重賞馬と言う勲章より中央G 1馬と言う勲章があった方が将来も明るいのも事実だ。

「お前も俺のモノでいたかったら、早くG1を勝てよ」
「あなたって人は・・・」

悲しいかな、そう言われて抱きしめられると自然と蕩けてしまう自分を樹里は感じていた。

樹里がその夜はベッドの中で散々身も心も蕩けさせられたのは言うまでもない―


さて一方、GTへ向けたその他の戦いはというと。
シンボリルドルフは日経賞を危なげなく制した。
先輩古馬のカネクロシオ・サクラガイセンを全く寄せ付けず4馬身差の快勝。
シロノライデンと好勝負を演じてきたホッカイペガサスは見せ場なく6着に敗れた。

牡馬クラシックのトライアル、弥生賞はスダホークが2番手から直線他馬を突き放して圧勝。
スプリングステークスはシンザン産駒の大物・ミホシンザンが2頭の2歳GT馬、スクラムダイナとダイゴトツゲキを相手に完勝。
そして毎日杯はスターライトブルーが相手に恵まれた面はあるものの2着に大差をつけるぶっちぎりの勝利で今年の初戦を飾ったのだった。

これで春のG1に向けて楽しみになってきた樹里。
そんなG1が迫ったある日・・・
突如の電話に栗東に向かったのだ。



栗東に着き仁藤厩舎に向かう。
厩舎事務所で仁藤が出迎える。

「オーナー、わざわざのご足労ありがとうございます」
「いえ・・・それでどうなんですか?」

仁藤は馬房に行きましょうと言い、樹里もそれに着いていく。
向かったのは・・・
スターライトブルーの馬房だった。

寛子が付いているスターライトブルー。
心なしか元気が無いように見える。

「先日、調教中に跛行が見られてましてね・・・診察して貰った所、軽度の骨折だと・・・」

言いにくそうな仁藤だが、気持ちはわかる。
いや、一番悔しいのは仁藤なのだろう。

「では、治療はどのように?」

樹里はレースの事はあえて聞かなかった。
と言うか、春はもう走れないだろう。

「思い切って牧場に戻すのもいいと思います・・・最近、馬の方もストレスでイラついているように見えたので」
「・・・分かりました・・・涼風ファームに手配しておきましょう」

残念ではあるが仕方は無い。
競走馬の世界ではよくある話だ。
今回は早期に気付けて良かったのかもしれない。

仁藤厩舎では、そんなスターライトブルーの話だけでなく、シロノライデンの話も出た。

「シロノライデンの方は順調で、今は坂路コースで調教を積んでいる所です」
「新しくできたのでしたね」

栗東に今年完成したばかりの坂路コース。
早速、仁藤厩舎も活用しているようだ。

「シロノライデンには効果抜群で、随分力強さが出ましたね」
「やはりそうですか」

涼風ファームの育成コースにも坂路が作られたが、まだ競馬知識の薄い樹里はその効果が分からなかった。
だが、プロがそう言うのなら効果はあるのだろう。

「ただ怪我がどうかと言うのも気になるので、馬によって向き不向きがあるかもしれません」

仁藤はあえてスターライトブルーには坂路を使ってなかったが、その予想は当たっていたかもしれない。
とりあえずそのスターライトブルーは一旦牧場に戻す事とし、春シーズンは休ませる事となったのだ。

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