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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 49

シロノライデンは至って落ち着いてパドックを周回している。
この馬は多少のズブさはあるものの気性面では手のかからない優等生である。
もう1頭のスターライトブルーは何かと手の焼ける問題児だとは聞くが件のシリウスシンボリほどではない。
それでもワガママなところを見せる馬をしっかりケアしてレースに使えるようにしてくれる仁藤師や寛子、それに必死にレースで結果を残そうと頑張る澪。
樹里は厩舎スタッフに厚い信頼を持っている。

人気はスズカコバン、メジロトーマスに遅れを取っているがそれも僅差。
樹里は仁藤と澪を信頼してるから人気をさほど気にはしていない。

パドックでの様子は、やはり人気上位馬の状態はすこぶるいい。
皆、ここを勝って本番に行きたいと言う思いが強く出ている感じだ。

そして合図と共に騎手が騎乗する。
シロノライデンはどっしりとした歩調は変わらないものの、前回より更に重厚感が増したような気がしている。
澪も鞍上で安心感がある。
菊花賞の時はまだ大きな馬体に関わらずどこか頼りなさを感じていたし、反応のズブさにも苦慮した。
あのロングスパートも苦肉の策みたいなものだった。
だが、前走のダイヤモンドステークスで直線勝負で差し切れた事が馬の成長を感じれるものだった。
今やその重戦車のような馬体に相応しいパワーを発揮できるようになった・・・
じっくり見ながら仕掛けれるから乗り手としても気持ちが非常に楽になったのだ。

パドックから本馬場に出ても落ち着き払っているシロノライデン。
それはズブいのではなく、競馬界の主役級になったと言う貫禄のようだった。

鞍上の澪も精神的に成長して、気持ちに余裕も出てきた。
デビューして1年経つが、騎乗数も勝ち鞍も順調に伸びている。

(今日もいい雰囲気だね)

最内枠に入った今回は真っ先に馬場入りして、ゆったりした足取りでスタート地点に向かっていく。
いつも通りの落ち着きに、優しくタテガミを撫でる澪。

レースもいつも通りのスタート。
特に遅れたわけではないが後方から進めていく。

澪はこれを仮想天皇賞と思っている。
横にミスターシービーが並び、遥か前にシンボリルドルフが位置していると言う展開。
阪神競馬場は京都競馬場に比べて直線が短いが、その分直線に急坂があってタフなコースになっている。

序盤はシロノライデンがポツンと最後方。
ペースは先行馬に本命スズカコバンが居る事もあって決して遅くは無い。
澪にしてもこの馬を仮想シンボリルドルフと思ってレースを進めていた。

このペースにシロノライデンは気持ち良さそうに走っていた。
スタミナには何も問題は無い。
相手関係もスズカコバン、メジロトーマス、シンブラウンは手強いと見ているが、決して勝てない相手ではないと思っていた。

そのスズカコバンはバックストレッチで先頭に出る。
これは加速した訳ではなく、自在にレースできる馬だからこその戦術だった。
そうはさせないとメジロトーマスやシンブラウンがスズカコバンとの差を詰めようとするがシロノライデンは動かない。

前方各馬が動き出すがシロノライデンと澪はあわてず騒がず。
ペースがどうであれ最後に届く自信は持っている。
澪はシロノライデンを信じているし、シロノライデンも澪を信用している。
どこで仕掛けるかもわかっている。

ほんの少し気になるのは、シロノライデンにピッタリ寄り添うように後方に構えている馬が1頭いること。
マサヒコボーイという長距離戦常連の追い込み馬で、鞍上の田沢は「必殺仕事人」とも呼ばれるベテランの名手だ。

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