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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 46

そのシロノライデンの動きは、各騎手に緊張をもたらしたのだ。

4コーナー。
馬群が大きく広がりシロノライデンの前で壁を作る。
これは騎手達が示し合わせた訳では無い。
それぞれが勝てる戦術を取った故にシロノライデンをブロックする動きになったのだ。
だが、いつもならもう加速してる筈のシロノライデンはまだ最後方だった。
前方に壁ができても澪はシロノライデンに合図を送る事は無かった。

そして直線・・・
ダイセキテイが先頭集団に並ぶ。
その後ろのホッカイペガサスも猛然と追う。
馬体を合わす2頭。
2頭が叩き合いながら長い直線を駆ける。

残り300mで2頭が集団から抜け出す。
充分に余力のある2頭は馬体を寄せて叩き合い。
壮絶なデットヒートとなった。

そして残り200m・・・
完全に抜け出しマッチレースの様相になったダイセキテイとホッカイペガサス。
ややホッカイペガサスが頭を出すが、ダイセキテイもそれに食い下がる。

だが・・・
スタンドから異様などよめき。
後方集団の最内から凄まじい勢いで上がってくる馬がいた。
シロノライデンだ。

巨大な馬体が弾むように猛スピードで追い込んでくる。
スローペースも、前方各馬のブロックもものともせずに前との差をみるみるうちに詰めていく。

あと200m。
ダイセキテイは酷な斤量が堪えて失速。
ホッカイペガサスが抜け出してリードを作ろうとするが、外からシロノライデンが差し切った。
そして1馬身さらに突き放して1着でゴール板を駆け抜ける。
澪はしてやったりの笑顔だった。

シロノライデンにとっては初の重賞制覇。
しかも完璧な形でだ。

ガッツポーズをする澪を見ながら、仁藤はやれやれと溜息。
入厩した時からポテンシャルはある馬だと思っていた。
だが、本格化するまでに時間がかかるとも思っていたし、この手の馬の調教は根気がいるのも理解していた。
だからこの重賞制覇は喜びもあるが、やっと報われたと言う気持ちも強い。

そして樹里にとっての2度目の重賞制覇。
父の形見のような馬だから勝って嬉しいと言うよりホッとした感がある。
そんな関係者を安堵させたシロノライデンの方は、長距離レースを走ったとは思えない程元気に帰ってくる。
他の馬より多少遅いが、今が成長期だと言う充実感が走り終えた馬体からも感じられてる。

そんなシロノライデンと澪に、ホッカイペガサスと柴原が馬を寄せてくる。

「完敗だよ・・・無事に本番まで持って行って、皇帝に挑んでくれよ」
「ありがとうございます・・・柴原さんこそ、まだ負けた気じゃないでしょ?」
「まあね・・・こっから盾までに立て直すさ」

屈託無く笑う柴原に頭を下げる澪。

ホッカイペガサスだって長距離の強豪の1頭。
この先今日のように簡単に勝てるとは思わない。
澪は喜びの一方で気を引き締めた。

長距離を走り切ってもシロノライデンはケロッとしていて特にダメージはない様子。
予定通り次走は阪神大賞典に向かうことになる。

そして今年最初のG 1、フェブラリーステークス。
中央では数の少ないダート重賞でしかもG 1である。
レースはダート王ハツノアモイが新鋭ギャロップダイナを抑えての勝利。
チャンピオンステークスに続いての栄冠となった。



3月を迎え、奈帆と由紀がアイルランドへ留学に向かう。
中、高の6年間の予定で現地の学校に通いつつ馬産の勉強もする事になる。

そして涼風ファームではエリック達4兄弟の到着と育成コースの完成・・・
それと共に2歳馬達も戻ってきて入厩の準備をする事になる。


その育成コース。
トラックコースは芝だけでなくウッドチップコースも備えられた。
これは真奈や幸子も初めて見るもので最新鋭の設備だった。
そして屋根付きの坂路コースも最新鋭のもの。
この設備群のお金のかかり方に真奈も幸子もビックリするしかなかった。
かつての貧乏牧場では考えられない設備だ。

そして・・・

「凄い・・・」

坂路コースを駆け上がるシロノヒリュウの83。
モガミ産駒の牝馬である。

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