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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 45

今回は斤量も恵まれた。
重賞2勝のダイセキテイだけが重いハンデを背負う恰好になり、あとは重くて54キロといったところ。
ジョッキーも人それぞれで軽い斤量も難なくこなせる者と軽すぎると乗れない者に二分されるが、澪は前者であり、実際ハンデ重賞で軽い斤量の馬の依頼も多く来ていた。

「あとはあの大物感ある馬を若い鞍上がどう乗りこなすかですなぁ」

テレビ中継の著名な解説者はそう評していた。

本馬場に出てもシロノライデンの手応えは抜群だった。
むしろ調子良過ぎてここが本番じゃないのよと澪も苦笑するぐらいだった。
返し馬から待避所に行っても落ち着き払ったシロノライデンに貫禄すら感じていた。

ゲート入りも苦手ではないシロノライデンはスムーズに入り出走を待つ。
スタートはスターライトブルーとは正反対にゼロダッシュを苦手とする為にゆっくり。
今回もじっくりと最後方からの競馬だ。

前年からのレース改変で長距離レースが大幅に減った中央競馬。
伝統の天皇賞まで距離短縮されて近代競馬に必須と言われるスピードを重視するようになった事で、長距離戦における騎手の経験と言うのが更に重要になった。
まだ長距離戦までスピード化の波は押し寄せずステイヤー天国ではあるが、そんな中でも馬のスタミナを温存させるのは騎手の腕前次第の所がある。
そして、それが勝負を分ける大きな要因となる事が多い。

だが、このレース改変で若手に長距離戦を経験する機会が極端に減ったのである。
そんな中で澪はシロノライデンのお陰で貴重な経験ができていると言える。

頭数の少ない長距離戦とあって隊列はすぐに決まりペースも落ち着く。超のつくようなスローペースだが、焦って出していくとスタミナを使ってしまい最後で力尽きる。

澪にとってシロノライデンは先生のようであり、またシロノライデンにとっても澪が先生のよう…互いにレースを教えていく、教えてもらう立場かもしれない。

レースは淡々と流れていく。
大した動きもなく2周目のバックストレッチに差し掛かる。

大した動きが無いのはバックストレッチに入っても一緒。
いや、正確に言うと動けないのだ。

大本命シロノライデンのデキはベテランジョッキー達は見ただけで理解している。
シロノライデンが追い込みをかける前に仕掛けたいのは山々だが、早すぎると捲られる。
かと言って動かなければやられる・・・
それぞれが仕掛けるタイミングを思案していたのだ。

特にその中でもシロノライデンの脚を一番警戒するのはホッカイペガサスの柴原だった。
関東でもトップクラスの名手である彼だが、彼をしてシロノライデンのデキは脅威以外の何者でもなかった。
ホッカイペガサスのスタミナには自信がある。
スタミナだけでなく追い比べた時の根性も非凡な馬だ。
だから先手先手で仕掛けてシロノライデンの末脚を封じる。
そう言うプランでレースを進めていた。

だが、その心がざわめく。
最後方でこのスローペースに落ち着き払ったシロノライデン。
馬がこれだけ落ち着いているのは、つまり騎手も落ち着いていると言う事だ。
小娘だと思っていたが、中々やるようだ。

前走ステイヤーズステークスでは自身の身体の問題でレースどころではなかった澪。
今はそれが解消されて落ち着いたレース運びができている。
もちろん前日には寛子にしっかり可愛がってもらっている。

3コーナー、大欅の向こう側あたりから徐々にペースが上がっていく。
2番手の馬が逃げる馬に並びかけていった。
実績馬のダイセキテイが動きを開始する。
それを見ながらシロノライデンは外からジワリと仕掛けていく。

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