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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 44

大方の予想は、シンボリルドルフは大阪杯からスタートして、今度はミスターシービーの最も得意とする2000mでの決戦に挑むと言うものだった。
ミスターシービー陣営もそのつもりで仕上げていると聞いた。
だが、発表されたローテーションは、シンボリルドルフは日経賞からスタートと言うもの。
それは同時に発表された海外遠征の計画の為だった。

これは海外遠征志向の強い馬主サイドの要望らしく、シンボリルドルフの消耗を極力抑えながら調整をして海外遠征と言うプランのようだ。
この馬主は名門牧場のオーナーブリーダーであり、以前から海外重賞制覇を目標に掲げているのは有名な話だ。
だが、独善的で調教師や騎手にも強く注文をつける為に批判も多い。
特に今回の大阪杯は新設のG 1であり、シンボリルドルフとミスターシービーの対決は目玉になる事から、関係者からこのローテーションに対する批判は大きかった。
ただ、馬主サイドはそれを気にはしてないようである。

一方のミスターシービー陣営も気にする様子はなく「うちの馬はうちの馬なりにしっかり仕上げてレースに出すだけ」と冷静なコメントを残した。
そんなシービーは中山記念か金鯱賞を叩くプランもあるようだが基本的には大阪杯に直行する模様。

シロノライデンには大阪杯の2000という距離は短いと言う仁藤の考えから最初から見向きもされていない。大阪杯を使ってミスターシービーが次に使うであろう天皇賞・春でどこまでライバルとして立ち向かえるか。
このダイヤモンドステークスから阪神大賞典、そして春の盾へ―明るい未来を描いている。

ダイヤモンドステークスでのシロノライデンのライバルは前年の勝ち馬で連覇を目指すダイセキテイと、前走ステイヤーズステークスで先着を許したホッカイペガサスの2頭である。

仁藤も澪もここでの勝利を目論んでいるし、それは可能なメンバーだ。
厩舎に来て一年半・・・
身体が大きいだけで見栄えのしなかった馬が見違える程に逞しくなってきている。
以前は調教も仕方なしに走ってた感があったが、夏を過ぎて真面目に走るようになっていき、冬が来た頃には相当力が入って来ていた。
それと共に馬体も充実して、今や重戦車のようなボディに仕上がってきたのだ。
あの菊花賞でシンボリルドルフに睨まれて小さくなってしまったイメージを払拭していた。

乗っている澪もシロノライデンの充実ぶりに満足するものがあった。
特に昔を知ってるだけに、今のシロノライデンは別の馬と言うぐらいに変わっていた。
事前調教の取材に来た関東の記者から驚く声も上がったぐらいだ。

「いやあ、シロノライデン・・・凄い出来ですねぇ」
「関西では淀で皇帝を迎え撃つ最有翼って評判だね」

調教を見ながら関東と関西の記者が情報交換をする。
関東馬の方が強いと言われている昨今だから、久々に現れたエース級に関西の記者の中では盛り上がっていると付け加える。

馬体重自体は菊花賞のときよりも20キロ近く増えている。
それは太ったモノではなく馬体の成長によるもの。
栗東から府中の遠征でも輸送によってストレスをためることなく、飼い葉食いも落ちずに状態を維持することができた。

「あの馬、なかなか手ごわそうだな」

ホッカイペガサス陣営がシロノライデンの馬体を見て言う。
ホッカイペガサスの鞍上は今回、岡江から同じくベテランの柴原に乗り替わっている。

長距離戦において騎手の経験が最も重要と言われるだけに、この乗り替わりは悪くは無い。
しかもホッカイペガサスも好調を維持してるし、こちらの陣営からしてもここは負けられぬ戦いなのだ。

そして当日。
一番人気に支持されたのはシロノライデン。
やはりど迫力の直前調教の評判は高かったようだ。
パドックでは雄大な馬体で他の馬を圧倒しているかのように見える。
これには他の出走馬の調教師達もしきりに感嘆していた。

「いや、やはりシロノライデンがいいね」
「そうだね・・・ここでこうだと春の盾が怖いね」

そう言い合う関東の調教師達に仁藤は『いやいやまだまだ』とは口で言うものの、自信は余りある程あった。
いやむしろ、ここを獲らねばならないぐらいのプレッシャーがある。

そのシロノライデンは落ち着いた周回。
もっさりとやる気の見えないかつての歩様とは違い、どっしりと落ち着きながらも力強さのある歩様へと変貌していた。
重賞未勝利ながら、まるで重賞馬のような貫禄さえあった。

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