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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 43

海外から帰ってきた樹里はその足で美穂に向かい、それから北海道へと飛ぶ。
もうすぐ小学校の卒業シーズンだけに話すなら早くしないといけない。

なので涼風ファームに到着して挨拶もそこそこに、まずは保護者である幸子と真奈にその話を持ち出した。

「本当ですかっ?!」

驚きながらも嬉しそうな真奈と何かを考えるような幸子。
対照的な反応だが、真奈が乗り気な所に樹里もホッとする。

「私達にとっても有難い話ですが・・・本人と話し合って決めて宜しいですか?」

幸子は流石に冷静だった。
勿論、この話が有難いとは思っているのだろうが、簡単に喜ぶ心境ではないのだろう。

「勿論、本人の意思は大事ですが・・・この牧場を任せれる次代の人間が必要だと思っている事は理解して貰えると嬉しいですわ」

微笑む樹里に幸子も表情を緩める。
勿論、これが悪い話とは思っていない。

「そう言えば、奥原先生と会ってあの子の預託をお願いしてきましたわ」

少し話題を変えてそう言う樹里。
あのモガミの子は奥原厩舎に預ける事に決めたのだ。

「それは、楽しみですね」

真奈も幸子も安心した表情を見せる。
スターライトブルーのホープフルステークスを観戦した際に奥原からあの馬を育ててみたい、という思いを聞かされ、樹里もそれに心を動かされた。それが決め手だった。
美浦に馬を預けることで、さらなる人脈を広げることもできる。

奥原からはお礼代わりに美浦の有望な若手騎手を数人紹介してもらえた。

海外から帰ってきてこんな風に預託を早く決めたのも全て奈帆の為だ。
樹里は奈帆も呼んで、この話をしたのだ。

「どうせだから奈帆ちゃんが名前を決めてくれてもいいわ」
「嬉しいですっ!!・・・でも、イメージが湧かないので・・・山の名前とかが似合いそうなんですけど」

成る程と樹里も思う。
どうせなら気高く美しい山の名前とかにしてみるのがいいかもしれない。

「何かいい案があったら教えてね・・・こちらでも考えておくから」

そう言いつつ、本題である留学の話を切り出す。
奈帆は戸惑いながらその話を聞いていた。

「由紀ちゃんと一緒に中学校行こうって約束したから・・・」

言いにくそうにそう言う。
これは樹里も理解できるが、この時期の友人関係は女子にとって大事なものだ。
特に共に生活しているから尚更だ。

「一人行くのも二人行くのも変わらないわ・・・彼女が良いと言うなら一緒に行けばいいわ」
「本当ですかっ?!」

真奈が娘の言葉を少し窘めるが、樹里は微笑んでそれを制する。

「由紀ちゃんと2人で相談して、決めてくれたらいいわ。向こうの人も凄くいい人だし何より奈帆ちゃんと由紀ちゃんは涼風ファームの未来を背負って立つ存在なのよ」
「はい…ありがとうございます!」

奈帆はそう言って部屋を出ていく。
由紀と相談するのだろう。

「早ければ春には腕利きのスタッフが来ると思います」
「そうですか…すごい話ばかりで…」

そしてその頃になれば育成施設とコースも完成する。
それらは祐志が一枚噛んでいたものだが、そもそもの設計がスノーベリー牧場の次男ヘンリーだった。
祐志の中ではその頃から計画していたようで、樹里は今回もまんまと利用されたと言う訳だ。
ただこちらにもメリットがある話だけに怒れないというのもある。


そうやって増員や施設拡張や留学の話を進め、2月に入る。
まず年初め1戦目はシロノライデンのダイヤモンドステークスだ。
東京遠征しての今回、シロノライデンは前戦から順調に調教され馬体重も増量。
馬体重以上に大きく見え、迫力が去年より増してる感があった。

そして澪も年明けから好調で、関西のリーディングではトップ10に入ってきている。
年末から何かを掴んだと周囲からも言われる通り、またぐんと実力を上げてきた感があった。
そんな風に人馬共に順調に迎えれたのである。


東京に来れば、他馬の動向も否応なく耳に入ってくる。
その中で衝撃的だったのはシンボリルドルフの動向だった。

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