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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 402

日本に導入された種牡馬の中でも、実績は過去一番と言っていい。
今の日本の競馬界を席巻するノーザンダンサー系種牡馬は、代表するノーザンテーストからして現役時は二流の競走成績しか出していない。
アメリカでは問題とされた血統背景も、日本であれば問題とならないレベルだ。
そして内国産種牡馬より外国産種牡馬の方が実績を残せている背景からも、実績あるサンデーサイレンスは有利だと見られていたが、やはりその見栄えしない外観が賛否が別れるのだろう。

見る人が見れば柔軟性に富んだ筋肉と不屈の闘争心・・・
この馬が普通でない事は分かる。
それに吉野は、ヘイルトゥリーズンからヘイロー、そしてサンデーサイレンスへと引き継がれた強烈な個性は子孫にも繋がっていくだろうと見ていた。
何よりも、社来にやってきた彼は王の雰囲気を纏っていた。
それに身が震えるのを覚えたのだ。


社来では積極的に手持ちの最上級の牝馬がサンデーに当てがわれる事になるが、涼風ファームでもそれは同じ・・・
G1勝ちの牝馬達が相手候補になる中、エリックの期待はサンデーと組み合わす為に購入したモミジダンサーであった。

モミジダンサーはヴァイスリーガル産駒。
自身は2勝クラスで頭打ちになってしまった程度で成績は残せなかったが、妹のロイヤルシルキーが重賞を勝っている。

母のモミジUがカナダ産まれで、あのノーザンダンサーと同じ生産者が手掛けた馬であり、カナダで重賞も勝った実力を持っている。

血統背景としては十分。
繁殖牝馬の場合、G1勝ち馬がすんなりとG1馬を出すとは限らず、隔世遺伝もありうる。
それを見極めて交配を決めるのが馬産家である訳だ。

エリックはこのモミジダンサーがサンデーサイレンスの種牡馬としての傾向を見極めるのに最適だと考えていた。
典型的なノーザンダンサー系産駒との相性が悪ければ種牡馬としての成功は無いと言っていい。
勿論、エリックはサンデーサイレンスが種牡馬として成功すると思っているからこそ、モミジダンサー以外にも候補は考えていたりもする。

「近年日本に導入された中ではトニービン以上だと思っている」
「やっぱり内国産よりその辺りの実績馬は一段レベルが上よねぇ」

エリックに真奈も同意する。
まだまだ日本と世界の差は大きいと真奈もエリックから学んで感じていたのだ。

「同系統ならリアルシャダイも良い馬だが・・・それ以上はブライアンズタイムだな」

リアルシャダイもブライアンズタイムもヘイルトゥリーズン産駒のロベルトの子だ。
サンデーサイレンスとも近い血統で、既にリアルシャダイは日本で実績がある。

樹里が所有していたスーパークリーク、佐原の所有だったオグリキャップ、さらにイナリワン、一足先にスタッドインしているタマモクロスなど、近年の日本競馬の活躍馬たちは現在の主流の血統には当てはまらないことから、エリックは彼らが種牡馬として成功出来るかには疑問を抱いている。

「リアルシャダイといえば、ウチにいるあの仔、すごく良い感じよね」
「ああ、アイツはいずれ大きなレースを勝てる」

真奈が目を細め、エリックが並々ならぬ自信を抱くリアルシャダイ産駒の牡馬、ライラックポイントの89。
近々、ライスシャワーという名前で登録される予定だ。
牝馬と間違われる程小柄であったが、身体のバランスが素晴らしく、サラブレッドの理想の体型と言って良かった。
また性格も素直で従順。
更に賢く、馴致も順調そのものであった。

「リアルシャダイは長距離で良い成績を出しているステイヤー血統だが・・・このスピード能力はステイヤーの枠に留まらないだろうな」

ラルフもライスシャワーの話題になると頬が綻んでしまう様子だった。
去年が馴致調教共に手こずらせたツインターボだっただけに、ライスシャワーの余りの順調さに涙が出るぐらいだった。
更に彼が担当した2歳馬の中では屈指のポテンシャル・・・
2歳時のクリークよりもスピードは優っていた上に、見た目以上に柔軟な筋肉で乗り味も抜群だった。

「ロベルトやサンデーも乗り味は良いと聞いたが、この系統の特徴なのかもな」
「ああ、どちらもヒールにされてしまったのが惜しい逸材だったな」

サンデーもイージーゴアにとって『ヒール』だったが、リアルシャダイの父のロベルトもイギリス競馬史に残るヒールとなった馬だ。

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