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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 41

なんとか乗り切れた先には勝ってゴールまで行ける。
澪は半ば祈るような気持ちで追った。
スターライトブルーは中山の坂を登ってもまだ余力は残っていた。

後ろとの差は…広がりもせず詰まりもせず。
スターライトブルーを追いかけていたトウショウサミットとサクラサニーオーの方が先に脚が上がったのだ。

しかし外からは脚を伸ばしてくる差し馬たち。
特にスクラムダイナとビンゴチムールが勢いよくやってくる。

残り200m・・・
脚の衰えぬスターライトブルーだが、トウショウサミット、サクラサニーオーが迫り半馬身差にまで詰める。
厳しい中山の坂でのデットヒート。
抜かされるかと思いきや、スターライトブルーが更に脚を伸ばして2頭を突き放す。

恐るべき二枚腰だ。
必死に追う2頭は半馬身まで迫ったが、そこからのスターライトブルーの二枚腰でまた一馬身以上突き放された。
スタンドが湧く中、残りは100m・・・

だがその追う2頭を瞬く間に外から交わした馬がいた。
スクラムダイナとビンゴチムールだ。
まさに鬼気迫る末脚で並ぶ間も無く一気に抜き去る。
そして先頭のスターライトブルーに迫った。

澪は必死に追う。
残りは50m程。
手応えは二枚腰で使い切った感はあるが、それでも必死に追う。

だが・・・

残りわずかでスクラムダイナ。
そしてビンゴチムールが抜き去る。
一瞬で交わされ3番目にゴール。
最後は流石に燃料切れだった。

一瞬夢を見た。
二枚腰を使った時はもしかしたら行けるのでは、すら感じた。
現実は厳しい。
馬もそうだが、自分がそんな早くにGTを勝てるほど甘くはない。

「お疲れ様。頑張ったね」
「いやー…あと少しでしたね」

装鞍所まで戻ると寛子が笑顔で迎えて労ってくれた。

スターライトブルーも流石に疲れたと言った感じで、鞍を取ると汗が白く浮いていた。

もう少し折り合いを付けれたら2000mはこなせそうな気がする。
それが今日乗った感想で、デイリー杯から成長した分だ。
春のクラシックまでまた成長してくれるといける気がするとも思ったのだ。

仁藤としても負けても収穫のレースだった。
樹里と会って先の事を相談する。

「今回は負けても収穫がありました・・・春まで時間を置いてしっかり仕上げていきたいなと」
「はい、では次走は・・・」
「スプリングステークスか毎日杯辺りで調整しようと考えています」

そこまで期間を空ければ、今日の激闘の疲労も癒せ、更に調教して上積みもできるだろうと言う考えだった。

こうして樹里の初年度は重賞制覇とG 1出走と言う幸先のいいものになった。
来年はもっと飛躍できると楽しみな年末となったのだった。


1985年の年明け。
明けて暫くした頃、樹里はダブリンにいた。
ここは、アイルランド。
隣には祐志がいた。

そこからタクシーに乗り郊外へ。
彼の知人に会いに行くと言う事だ。

この男、学生時代にイギリス留学している。
それも樹里や数人の女に費用を貢がせた上でと言うスケコマシぶりである。
その時に作った人脈らしい。

そしてタクシーは郊外の牧場に到着する。
思わず息を飲むぐらい絵になりそうな綺麗な牧場・・・
見とれながら祐志と共に入ると、金髪の女性が出迎える。

『ユーシ!!来てくれたんだ!』
「よう、久しぶりだなアネット」

英語の喋れる樹里だから言う事は分かるが、英語が無くても多分分かる事がある。
このアネットも祐志は抱いたんだろう。
そう言う人脈と言う事だ。

そのアネットと目が合う。
お互い『ああ』って感じで感づく。

「樹里です、よろしく」
「アネットよ、よろしくね」

仲良くは出来そうとは思う。
嫉妬心は感じないと言うか、同じ男に抱かれたシンパシーを感じてしまう。

アネットはこのスノーベリー牧場のオーナーの娘。
母や兄弟と共に経営してると言う。

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