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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 40

「自慢のカレシなんですよ」
「そりゃあ、勝てんな!」

面白そうに笑う高島。
手強いベテランジョッキーだが、多分新人の自分をリラックスさせようと話しかけてくれたんだろう。
良き先輩に素直に感謝する。

そんな話をしていると発走の時間が迫ってくる。
それをまってましたとばかりにゲートに飛び込むスターライトブルー。
これはいつも通りだが、いつも以上に飛び込むのが早い。
先導要らずで入っていくスターライトブルーに係員が目を丸くするのに澪は笑ってしまう。

多少手こずる馬もいたが、大幅な遅れは無く全馬ゲートイン。
開いた瞬間、スターライトブルーが猛然と飛び出した。


いつも通りのスタートダッシュ。
スタートの上手さとゼロダッシュの速さはここでも随一。
他が出遅れかと言うぐらいの差をつけて先頭に立つ。
あとはここからだ。
言う事を聞いて抑えてくれれば2000mは持つと澪は思っていた。
澪が手綱を緩める・・・

スターライトブルーは完全に無視。

「やっぱりぃぃぃっっっ!!」

いや、予想はしてたわけだが、澪は今日の感じなら抑え込めるとも思っていた。
それははかなくも散った…が、無理に喧嘩するわけにもいかない。

後続とは2馬身、3馬身とリードが広がる。
誰かが行かなければ逃げよう、と考えていた騎手もいたようだが、スターライトブルーが先陣を切って行ってしまったのを見て隊列は落ち付きだした。

もちろんスターライトブルーは引っかかって行ってるわけではない。
この馬の競馬をさせてどこまで粘れるか、澪は切り替えて考え始める。

ふと後続と離れたと思い見てみると、1馬身程後ろにつけてきた馬がいた。
トウショウサミットだ。
いつも間にか2番手で追走していた。
先頭争いをすると言うより、真後ろに位置してピッタリと張り付いていた。

(熱くならないでよ・・・)

初対戦のスターライトブルーの気性を知っているとは思えないが、ピタリと後ろにつけられるのを嫌う傾向があり、そうなると暴走気味になる。
横に並ばれるのも我慢できないが、それより追走される方が暴走が多い気は澪もしていた。
勿論後ろにつけられてもある程度離れていれば気にしないが、近いと相当に嫌がる。
なので調教は基本単走だし、中山に来てからの調教も単走しか行っていない。
だから癖を見られたのではなく偶然だと思うが、嫌な所につけられたと澪は心の中で舌打ちする。

その澪の心配通りスターライトブルーが焦れてきた。
いきなり暴走・・・
とまではいかないが、ストレスを溜めながら走っているのが澪にも伝わる。
澪はひたすら我慢我慢と唱え続ける。

こちらは未知の距離に挑んでいる。
暴走なんてしたらスタミナは当然消費してしまい失速につながる。
なんとかして抑え込んで走らせ続けたい。

トウショウサミットはつかず離れずの競馬。
高島は後ろからスターライトブルーの走りを見ながら改めていい馬だと感じていた。

3コーナーあたりからその後続が徐々に動きだす。
人気のサクラサニーオーがジワジワ進出を開始してトウショウサミットの外に並んでいく。

その辺りでスターライトブルーの我慢が限界に達したのを感じていた。
言う事は聞かないなりに今回は多少我慢してくれたスターライトブルー。
スタートダッシュでは勢い良く飛ばしたものの、鞍上の澪が呼応しない事で何となく速度を緩めはした。
だが、トウショウサミットにつつかれてストレスを溜め、サクラガイセンが来た事で限界に達したのだ。

3コーナーでグンと加速したスターライトブルー。
トウショウサミットとサクラガイセンを2馬身程引き離す。
澪は早いと宥めようとするが、スターライトブルーは完全に火が点いていたのだ。

こうなると止めようがない。
調教の時にたまにやらかす暴走とは違い、そこまで酷い加速ではないが明らかに早い仕掛けだ。
澪としては後は運を天に任すぐらいしかない。

後ろ2頭も離されまいと追ってきて4コーナー。
落ち着いたペースから一気に早くなっていた。
その2頭の後ろの集団は少し距離があったが、直線には中山名物の急坂がある。

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