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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 5

久々の競馬場の馬主席でウキウキしてる長女の梓。
物珍しそうに周囲を見ながらも大人しくしている次女の楓。
同い年で親友でもある従姉妹の紗英が付いてきているが、彼女もどこか嬉しそうではある。

「おや、アイドル達が帰ってきたね」
「ご無沙汰していました」

目を細めてそう言うのは父の代からの付き合いの馬主である山野。
資金力や実績もある大馬主の一人だ。
そんな彼以外にも樹里は挨拶回りに忙しい。
本業で関わりのある社長も多いのだ。
そして彼女の子供時代もそうだったが、彼らにとって小さな子供は孫のようで可愛らしいようだ。
中には子供連れで来る馬主もいるからと、お菓子をわざわざ持ってくる者もいるぐらいだ。

「仁藤先生に聞いたけど、無事にデビューできて良かったねぇ」
「はい、この時期までかかってもデビュー出来て良かったです」

山野の言う通り、仕上がりには苦労したと仁藤調教師からも聞いた。
レースを出しながら仕上げていく方法も無くも無いが、むしろじっくり待った方が良いとの判断でこの時期になった。

「じっくり乗り込んで来たので初戦から走れる態勢は整っています。あとは既走馬との力関係がどうかでしょう」

仁藤調教師からはそんな言葉を聞いていた。

「514sか。大きいねえ」
山野がパドックのモニターを見て言う。
シロノライデンの馬体重はこのメンバー中でも最重量だ。

「おまけに鞍上にもアイドルを配してきたんだね」
「先生たってのお願いで、ずっと調教でも乗ってくれていたそうなので」

そう、シロノライデンのデビュー戦の鞍上は相沢澪騎手なのだ。

彼女はここまで通算3勝。
新人騎手・・・それも女だと言う事を差し引いても、この時期としては悪い数字ではない。
馬事公苑養成所の最終世代の中では、これでも最多勝なのだ。
それだけ新人としては厳しい世界なのだが、彼女は中央初の女性騎手とあって話題には事欠かないのだ。

そんな澪がパドックで騎乗指示と共に乗ると、今までもっさりと歩いていたシロノライデンが途端にキビキビと歩き出す。
鞍上の澪はそんな様子にホッとした。

厩舎でもシロノライデンは厩務員から『もっさりくん』と呼ばれるぐらい動きが鈍重だった。
ばんえい馬じゃないのかとか、前世は猫だったとか言われるぐらいのんびりマイペースな馬だった。
調教でも走る気があまり無く仁藤も頭を抱えるぐらいだったが、養成所から澪が仁藤厩舎に入って調教で跨るようになってから馬が変わってきたのだった。

コイツ、相当な女好きなんじゃないかと仁藤も冗談混じりに言っていたが、そうではなく相性の問題と見ていた。
ともあれ順調に調教をこなせるようになった事で、シロノライデンのデビューの目処がついたのだった。

彼女がいなかったら秋の福島でも目途が立たなかったかもしれませんよ、と仁藤は少し大げさに言っていたがそれも強ちそうでもないのでは、と思わせるような気合の乗り方に見えた。

パドックから地下馬道を通り、シロノライデンが馬場に姿を現す。
1枠1番なので誘導場に続き真っ先にダートコースを横切り芝コースに駆け出す鹿毛の馬体。
500キロを超す巨漢ながらそのフットワークは軽い。

「これは、一発あるかもしれませんな」
「まさしく人馬一体という感じだったね」

馬主席にそんな会話が飛ぶ。

そんな期待は勿論、樹里も同じだ。
スタートの時を心待ちにしていた。

そしてそれは澪も同じ。
仁藤調教師からは『スタートから焦らずじっくりと行け』と簡単な指示があっただけだ。
馬体が大きいだけでなく、ストライドも大跳びでごちゃつく展開はしたくない。
そんな事を考えつつゲートに入るが、大人しいながらもシロノライデンは若干いつもより闘志が乗ってる気はしていた。

勢いよくゲートが開く。
全馬出遅れも無い綺麗なスタート。
シロノライデンは五番手辺りから少しずつ順位を下げていく。
ここまでは仁藤と澪の狙い通りだ。

14頭と多頭数のレース。
当然、先行から中団まではごちゃつく展開となる。
バックストレートに差し掛かる辺りでのシロノライデンは後方から3頭目。
集団からやや離れて追走と言うポジションだった。
ペースは平均。
遅いペースなら嫌だと思っていた澪にとっては平均でも良い。
人気馬の多くが先行の為にペースが落ちないだろうと仁藤も澪も予想はしていた。
そしてこの先は、そんな先行馬泣かせの淀の坂がある。

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