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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 400

悠や陣営にとっては必然の勝利も、ファンからすれば奇跡だ。
翌日の紙面では、『オグリ奇跡の復活』などの文字が大きく踊るだろう。
こうして時代が昭和から平成に移り変わった時に現れた怪物の物語は、若き天才の導きで大円団を迎えたのだった。


年明け早々、ナイスネイチャが一勝クラスに出走したものの6着。
負けはしたが内容は悪くなく、体調も良い事から2週間後の若草ステークスに登録された。
だが、そこには2連勝してここを叩き台とする新たな怪物がいたのだ。

当日、ナイスネイチャは3番人気。
一番人気は、2連勝でここに挑むトウカイテイオーであった。

トウカイテイオーは『皇帝』シンボリルドルフの初年度産駒の一頭である。
叔母にトウカイローマンを持つテイオーは幼少期から周囲の期待を集めていた。

当歳時のトレーニングの段階から他の幼駒よりもずば抜けて運動能力が高く、1歳の時には牧場の放牧地の柵を飛び越えて外に出てしまうほどの脚力を持っていた。
当然牧場ではテイオーが脱走したと大騒動になったが、当の本馬は涼しい顔で飛び越えた柵を再びジャンプして戻って来ており、大きな怪我もなかった。

そのテイオーが抜けた人気となっていたが、他にもイイデサターン、シンホリスキー、ミスタースペインといった素質馬も多く、2〜5番人気まではかなり接近していた。

本場のトライアルである弥生賞やスプリングステークスに比べるとメンバーは落ちると言っても、関西では評判の素質馬が集まっていた。
ナイスネイチャもその中の一頭として数えられていた。

独特のステップで本馬場に入るトウカイテイオー。
主戦を務める安畑は今日も感触の良さに感嘆していた。
今まで彼が乗った馬の中で抜群に乗り心地が良い。
極上の高級車のサスペンションのような乗り心地で、惚れ惚れしてしまう程だった。

安畑はローカルが主戦場・・・
G1戦線には殆ど縁が無かった。
ベテランと呼ばれる歳になり、怪我の影響で思うような騎乗ができなくなり、キャリアの終わりを感じた安畑は、数年かけて調教師試験の準備をしていた。
そんな最中に出会ったトウカイテイオーは、安畑に騎手としての最後の火を灯して奮い立たせていたのだ。


レースはシンホリスキーが逃げを打ち、イイデサターンが3番手。
ナイスネイチャとトウカイテイオーはほぼ並んだ位置で中団を追走していく。

少頭数ながらペースは平均かそれより少し遅いくらいでレースは進んでいく。

3コーナーあたりから馬群が凝縮され、少しずつペースが上がっていく。
2番手の馬が後退していくのに代わってイイデサターンがじわじわ上がる。
それと一緒にトウカイテイオーもポジションを上げていく。
ナイスネイチャはその後ろ。

トウカイテイオーは早くも3コーナーで先頭に並びかける。
抑えきれないと言う感じでそのまま先頭を奪うと、独走態勢に入ったのだ。

普通なら早すぎる仕掛けだ。
しかもこの時期の3歳馬としては2000mは最長距離でもある。
だが、トウカイテイオーにとって、それは全く関係無かった。
グイグイと加速していきコーナーを回る。
慌てたように他の馬もトウカイテイオーに詰めようとしていくが手応えが全く違う。

直線に入り先頭をキープするトウカイテイオー。
イイデサターンも必死に追うが、追ってもいないトウカイテイオーに追いつく事すらできないでいた。

そしてナイスネイチャは道中スムーズに行かなかったものの、直線に入り大外を通って追い上げてくる。
トウカイテイオーを凌駕する脚で前を捉えようとするが、余りにも道中のロスが大きかった。

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