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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 399

血統的にもスタミナ十分なオサイチジョージはここからリードを広げ逃げ切り体勢を作る―鞍上の丸川はそういう思惑でいた。

外からミスターシクレノンも動こうとするが、道中先行勢にとりつく形で急ぎ過ぎたか、それほど差が詰まらない。
メジロアルダン、リアルバースデーも仕掛けるタイミングが遅れた。
かかり通しだったヤエノムテキは馬群に飲まれそう。

ここで芦毛の一頭ホワイトストーンが仕掛けにかかる――が、その外にさらに芦毛の馬体。
オグリキャップもポジションを上げにかかった。

スルスルと自然にポジションを上げて行くオグリキャップ。
悠は勝負所と見て動いたのだ。

コーナー出口前に、外に持ち出すように顔を外に向けるオグリ。
だが、外に持ち出す事無くコーナーを回り切る。
これはかつて澪がコーナー終盤に手前を替える際に、内にヨレる癖を見抜いてやっていた事だ。
彼女からその癖を聞いた悠も、それをキッチリやり切り直線入り口で左手で鞭を入れて手前を替えさせたのだ。

そこからの伸びは悠の知っている怪物の脚だった。
いや・・・全盛期の八割程度だったかもしれないが、それはイナリやクリークに乗った悠が見てきたオグリキャップの豪脚だった。
オサイチジョージに並びかけると、ジワジワと差を詰め並んでいく。
中山の坂も復活した怪物の脚には全く関係は無かった。

オサイチジョージを交わし先頭に立ったオグリキャップ。
大歓声の中、全く脚は止まらない。

冬枯れの中山の芝で、芦毛の馬体が弾み、躍動する。

(今日の走りだったら、引退させるには惜しいけどな)
悠はそう思いながら懸命に手綱を動かす。
後ろから追い詰めてくる馬はいない。
ホワイトストーンが2番手に上がろうとするがまだ差はある。

「オグリ先頭!オグリ先頭!」

アナウンサーが、抜け出すオグリの姿を見てそう叫ぶような口調で実況する。

「ライアン、ライアンっ!」

そのオグリを連呼するアナウンサーの横で大沢慶一郎がメジロライアンの名前を連呼する。
その言葉通り、後方から一頭だけ違う脚で駆け上がってきたのだ。

超スローペースに苦慮していたライアンと横平だったが、ライアン自身はこの超スローペースの中でも比較的上手く折り合っていたと言える。
位置が後ろなのも、このペースでも追い込める自信があったのもある。
クラシックこそ無冠に終わったライアンであったが、その素質は間違いなくG1級なのだ。

猛烈なライアンの追い上げ。
だが、この時ばかりは相手が悪かった。
オグリキャップの脚が全く衰える事が無かったのだ。
ライアンはホワイトストーンを交わすのが精一杯。
その間に、オグリキャップが一着でゴール板を駆け抜けたのだった。

悠にとっては会心の騎乗であった。
無論、超スローペースと言う難しい展開や、メンバーに強烈な瞬発力を持った馬がいなかったのもある。
だが、何よりオグリキャップのポテンシャルが衰えたとは言え怪物であったと言うのも大きかった。

ラストランで会心の騎乗ができて、勝利することができた。
ある時は宿敵として、ある時は相棒として。
一時代を共にしてきたスターホース。

高らかに右手を上げながら、悠はスタンドの声援に応えた。

『オグリ!オグリ!』

スタンドの大観衆ももちろんオグリがラストランであることを知っている。
中山競馬場がオグリコールの大声援に包まれた。

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