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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 396

オグリキャップは後方待機策だった訳では無い。
スタートが全く上手くいかなかったのだ。

本来スタートの下手な馬では無いし、乗っているのはスタートの名手増川だ。
その増川をもってしても挽回できないぐらいスタートが悪い状況で、仕方なく後方からの競馬となった訳だ。

しかも悪い事に、逃げる予定のスタイリッシュセンチュリーがスタートに失敗。
去年の狂乱ハイペースを作り出した快速馬イブンベイもなりを潜め・・・
オサイチジョージが逃げる展開となり、去年とは打って変わってのスローペースとなってしまったのだ。

カコイシーズやベタールースンアップなどの有力馬は前目の位置につけ、アルワウーシュ騎乗のエイミーは中団で思案していた。
そんなそれぞれの思惑を乗せながら、レースはスローペースで淡々と進んで行くのだった。

オグリキャップは何とかしてポジションを上げたいと鞍上の増川が画策するが、道中はオグリ自身に前進気勢がないのか前との差が詰まらない。
何とかして1頭かわすが、それは中央GTのペースについていけない地方馬ジョージモナークであるから実質何らポジションに変わりはない。

淡々とレースは進み3コーナー、大欅の向こう側を通過。
先団馬群は一気に凝縮されひとつの塊となる。
手ごたえがよさそうなのはカコイーシーズとホワイトストーン。
ベタールースンアップ、アルワウーシュも徐々にポジションを上げる。

そして、直線。
横一線に目一杯広がっての叩き合い。
カコイシーズ、オードが真っ先に先頭に躍り出ると、それに続くのがベタールースンアップとアルワウーシュ。
日本馬ではホワイトストーンとヤエノムテキが必死に食い下がる。
ベルメッツやイブンベイも必死に追うが、先頭集団が止まらない。
そして、早めに先頭に立ったカコイシーズが失速・・・
そのカコイシーズをオードとベタールースンアップが交わしていく。

最後はオードとベタールースンアップの叩き合い。
ゴール前でオードを競り落としたベタールースンアップに軍配が上がった。
カコイシーズは3着、そして4着には日本馬最先着のホワイトストーン。
5着はホワイトストーンにクビまで迫ったアルワウーシュとエイミーであった。

そして、オグリキャップは・・・
終始見せ場も無く馬群に沈む11着であったのだ。

スタートも決まらず、レースペースも上がらない中でまったくいいところなく終わってしまった。
これにはオグリキャップに期待していたファンも

「オグリはもう終わった」

と思わせるような結果になってしまったのだ。

さすがの祐志もこの結果には肩を落としており、次走の有馬記念で引退、という方向で話が進んでいった。

ただそんな中で、栗東に帰厩したオグリキャップを見ながら、調教師の瀬戸内は首を傾げていた。
「何でやろなぁ・・・あんな負け方する筈は無いんやけどなぁ・・・」

天皇賞がオグリキャップ史上最悪のコンディションだとしたら、ジャパンカップはそこから随分と回復していたと瀬戸内は見ていた。
それだけにあの惨敗は納得がいかない。

「色んな相性だと思いますよ」

オグリを撫でながらそう言うのは澪だった。
オグリが帰厩すると聞いて会いにきたのだ。

「相性かいな・・・澪がおったら気にする事無かったんやけどなぁ」

瀬戸内は澪の大きなお腹を見ながら嘆息する。
澪が騎乗するのなら多少の体調不良でも気にする事も無かっただろう。

「オグリくんは真面目過ぎるから、前半は適当に走らせておかないとね」

澪が言う通り、気合いと共にスタートする増川のスタイルはオグリとの相性が悪いのだ。
真面目過ぎるが故に前半から気合いを入れてしまうと、道中抜く事が出来ずに後半失速してしまうのだ。

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