アクアパッツァが逃げ切りスプリンターズステークスに続けてのG�T制覇。
スプリントに続いてマイルでも強さを見せつけたことで短距離界に若き女王の誕生をアピールして見せた。

バンブーメモリーは最後にパッシングショットに交わされて3着。さらにサマンサトウショウにも迫られてしまった。

大観衆にガッツポーズで応えるエイミーを見ながら、悠は自分には何が足りないのか頭を悩ませ、引き上げるのだった。


そしてジャパンカップ。
天皇賞の敗戦から雪辱を誓うオグリキャップであったが、全く調子の上がらぬままであった。
調教では条件馬に遅れを取り、あのオグリの代名詞である大食もなりを潜めている程不調であった。
これは夏頃から次々と発症した脚の故障と、過度なマスコミの取材活動によって調子を狂わされていた事が大きな要因だろう。
更に言えば、澪や南と言った相性の良い騎手が乗っていない事も一つの要因になっていた。
それでもオグリを信じるファンは多い。
いや、オグリキャップによって多くの競馬ファンができた事によって、根拠無く怪物の復活が期待されていたのだ。
故にこの年のジャパンカップも、物凄い数の来客者を叩き出していた。

こんな状況で回避等陣営に言い出せる訳が無い。
不調から立ち直る様子は無かったが、オグリキャップのジャパンカップ出走は決定されてしまったのだった。

天皇賞での敗戦もあってか、オグリキャップは1番人気に支持されるほどではなかった。
それでも復活を期待するファンは当然多くいた。

今回のジャパンカップにはスーパークリークが欧州遠征の際に死闘を演じたベルメッツが参戦し大きな注目と人気になった。
クリークが引退してお手馬がなかった悠だが、オグリとのコンビ復活にお声はかからなかった。

アクアパッツァでマイルチャンピオンシップを勝ってのけたエイミーは、アルワウーシュと言うアメリカ所属馬の依頼を受けていた。
この馬はイギリスでデビューしたものの芽が出ず、イタリアで走り主要重賞を連勝。
そこからアメリカに移籍して好走したものの、近走は全く奮っていない馬だ。
ただエイミーの騎乗が決まった事で、彼女の知名度で若干人気は上がっていた。

そんな海外勢はベルメッツを筆頭に、豪州最強の呼び名が高いベタールースンアップ、カコイシーズが続き、オグリキャップはその後に続く人気となっていた。
去年は驚異のレコード決着を演じたオグリキャップも、今年は調子が戻らないままジャパンカップに参戦する事になってしまった。

そのジャパンカップは、誘導馬が登場しただけで大歓声にスタンドが揺れた。
大人しい誘導馬すら興奮するような状況の中、各馬姿を表していく。

コースに出ていくオグリキャップ。
馬体に大きな変化こそないものの、これまで見せていた元気さが鳴りを潜めているように映った。

確たる逃げ先行馬が不在の中、ゲートが開いて果敢に逃げの手を打ったのはオサイチジョージ。
そこにスタイリッシュセンチュリーとプティットイルが続き、カコイーシーズもその一角に陣取る。
ベルメッツは前から5番手あたりでホワイトストーンと並走。

オグリキャップは馬群の一番後ろで最初の1コーナーを通過する。