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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 394

騎乗技術は同年代の若手の筈のエイミーだが、悠から見ても日本だとトップクラスと言える腕前に見えた。
勿論、彼女はアメリカでも若くして実績を上げてるとは言え、彼女の技術はアメリカ競馬のレベルの高さを物語っていた。
そして何より勝負勘が良い。
競馬も勝負である以上、勝負勘の良い騎手はやはり強いのだ。
更に悠がエイミーのスタイルで気になったのは、果敢さだ。
兎に角、先手先手で仕掛けてくる・・・恐らくアメリカ競馬がそう言うスタイルだからなのだろうが、だからと言って馬に多大な負担はかけていないのが悠を唸らせるぐらい上手いのだ。


そんな悠の思考通り、レースは好スタートと共にアクアパッツァがハナを取る所からスタートした。
ここまでは悠の予想通りだ。
そして恐らくペースは速くなるだろう。
そう予想して、悠はバンブーメモリーを控えさせる。

単騎で行ければ楽なところであるが、スプリンターズステークスのレースのようにはさせまいとやはりマークは厳しくなる。

ナルシスノワールが競りかけて行き、さらにホリノウイナー、ヒカルダンサー、ミスティックスターと先行馬が固まっていく。

悠にとっては予想通りの展開になっている。
1000m通過は58秒4。かなり速いペースで息の入れる余裕はないはずだ。

悠とバンブーメモリーはちょうど中団あたりに構える。

このハイペースが悠の読み通りなら、エイミーにとっては目論見通りであった。

逃げ先行馬にとってハイペースは辛い。
これはどこの国の競馬でも変わらない。
だが、ハイペースであれど逃げ先行に勝機が無い訳でも無い。
更に言えば、ハイペースで勝つ馬が最強馬かと言えば違う・・・
要はそれを織り込んだ上で、戦術として落とし込めれば勝てる可能性があると言うだけの事だ。

つまり、エイミーは戦術としてハイペースを選択した訳だ。
小回りの利くアクアパッツァにロス無くコーナーリングさせつつ息を抜く。
更に効果的に手前を替えて少しでも脚を温存。
後はアクアパッツァの最大の武器であるスピードを生かす。
幸い競り合いにも強い馬だから、最後まで持たせれるだろうと想定していた。

実際競りかけてきたナルシスノワールの方が早く音を上げ、鞍上の手綱が激しく動く。
その後ろにいる先行勢もやや脚色が厳しくなりだす。
2番手のホリノウイナーはまだ手ごたえ十分という気配だが、その後ろの馬群が徐々に凝縮され、スパート、末脚合戦の空気を醸し出す。

これなら差せると悠は思っていた。
実際バンブーメモリーはその通りに期待に応えいい伸びを見せていた。
しかし前を行くアクアパッツァがなかなか止まらない。
自分のいる後ろからはパッシングショットとサマンサトウショウがさらにすごい脚で追い込んでくる。

だが、アクアパッツァは止まらない。
悠の想像を超える粘り腰だった。

「まだいける!まだいけるよ君は!」
そう言い追うエイミーに応えるようにアクアパッツァは力強く走っていた。
闘争心を面に出すディザイアと違い、アクアパッツァは穏やかで荒ぶる所が無いと言われる馬だ。
だが、エイミーは彼女に眠るレースに対する闘争心を見出していた。
故に先行抜け出しの優等生的なレースよりも、果敢に逃げた方が持ち味が出せるとも感じていた。
この辺りの豊かな感性がエイミーの持ち味であり、あのサンデーサイレンスを御せたのもその辺りであるのだ。

逆に悠は、エイミーに紙一重だが及ばぬのを感じてしまっていた。
若手の中では天才と呼ばれ、国内では敵なしに見えた悠だが、世界は広い・・・
しかも同年代とは言え、エイミーはアメリカのダービージョッキーなのだ。
その紙一重の差の大きさを思い知った気分だった。
しかも以前にそんな差を感じたのが澪・・・
彼女にも超えれぬ壁を感じた事があった。

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