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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 393

樹里が引退の旨を仁藤に話すと、彼は「よく頑張ってくれたし、うちの厩舎にとって非常に大きなモノをもたらしてくれた」と感謝の意を述べた。

悠は「クリークにはいろいろ教えてもらいました。これを糧にこれからどんどん僕が成長していくことが一番の恩返しです」と語った。

イナリ、クリーク、オグリの3頭で「平成3強」と呼ぶ者もいた。
その3強のうち、2頭がターフを去る。
確実に時代は移ろいゆくものだ。

そんな天皇賞の次の週。
秋のG1シーズンの中休みであるこの週に、京都の2歳1勝クラスのもちの木賞にサムシングブルーが出走。
鞍上は前走見事に初勝利を上げたコンビであるエイミーが務める。
彼女にとっては得意のダートで、好スタートから先手を取る。
そしてロス無くコーナーを回らせると、後続を振り切っての勝利。
見事に連勝を飾った。

来日して1ヶ月が経ったが、エイミーの勝率は凄まじく、騎乗依頼も増えつつある。
彼女も若いが、同年代の関西の若手達より技術は頭一つ抜けている印象だった。
彼女に技術で対抗できるのは悠ぐらいで、それも彼女の騎乗依頼を増やしている要因だった。

「いやぁ、助かる、ホント助かってるわ!」
エイミーを引き受けた寛子はその恩恵を一番受けていた。
悠に関しては他所の厩舎の素質馬で経験を積ませたいが、そうすると自厩舎の乗り手が他所から頼まないといけなくなる。
その部分をエイミーが担ってくれた上に、悠と変わらぬぐらい結果を出してくれる為に感謝しかない。

エイミー自身も母国で若干頭打ちの状態にあったところでのオファーに最高の結果で応え、加えて日本の競馬のスタイルも学んで、非常に実りのある経験ができていた。

そんな中で行われるのがマイルチャンピオンシップ。
悠が天皇賞・秋からの強行ローテで挑むバンブーメモリーで参戦することから、アクアパッツァは引き続きエイミーとのコンビで臨むことになった。

前週のエリザベス女王杯では、ディザイアがキョウエイタップの強襲の前にまさかの敗戦。
インをついたディザイアが不利を受けた所を大外から横平の鮮やかな強襲であった。
そのディザイアはレース後疲れが出た事で、次走を大阪杯として小休止に入る事になった。

濱松厩舎としてはそのディザイアのリベンジの意味合いもある。
本来の主戦は悠だが、スプリンターズステークスでのエイミーの相性の良さから引き継ぎ彼女に騎乗を任せる事になった。

ライバルはやはりマイル王者バンブーメモリー。
短距離から中距離まで万能に走れるが、マイルにおいては無類の強さを発揮し、オグリキャップとも死闘を演じた実績馬だ。
それに続くのはルイテイト、ラッキーゲラン、カッティングエッジである。

パドックを歩く各馬。
所属厩舎の馬と、父が管理する馬。
悠にとってはどちらも勝手知ったる相棒である。
身体が2つ欲しいという気持ちすら沸いた。
アクアパッツァとバンブーメモリー、しかも隣同士の枠ときたら、意識しないわけがない。

(彼女は素晴らしい乗り方をしていた)

スプリンターズステークスが行われた日、悠はロンシャンにいた。もちろん日本のレースの地にはいない。
しかしそのレースぶりは何度もチェックした。

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