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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 391

しかしライアンを管理する奥原は「勝った馬が強かっただけで、ウチの馬に運がなかっただけだよ」と鞍上を責めることは決してしなかった。

ライアンの次走は有馬記念。
菊花賞で敗れた同じオーナーのマックイーンは管理する池井調教師が「有馬はライアンに勝って欲しいからね」とコメントし、グランプリ出走はないと明言した。

そんなライアンを特に気にかけていた男がもうひとりいた。
日曜の競馬中継の人気解説者、大沢慶一郎だ。

大沢慶一郎は人気競馬解説者として名を馳せていた。だが89年に腎臓摘出手術を受けた後に、相当気持ちが落ち込み、もう引退かと言われていた時期があった。
そんな中で『もう競馬を見られるかどうか分からない』と考えていた頃、ライアンが勝った弥生賞を見たことで『もういっぺん競馬をやりたいなって気になった』と言う。

ライアンの父アンバーシャダイは大沢の気に入っていた馬であった。
大沢は馬格が貧弱ながら第一線で活躍していたアンバーシャダイを常に気に掛けて応援してきた。
その父に瓜二つで、なおかつ父が持っていなかった立派な体格を備えていたメジロライアンを『アンバーシャダイの理想型』と見ていた。
更にに落ち込んだ時に奮い立たせてくれたライアンは、大沢にとって特別な馬となっていた。
『やっぱり、何て言うかな・・・僕にはライアンが切り離せないんだなあ』と菊花賞の敗戦後にも語っていた程だ。


そして、牡馬クラシックが終わり、いよいよ古馬の頂点を決める戦いが始まる。
全ての競馬ファンの注目は宝塚記念以来の出走となるオグリキャップだった。

安田記念は破格の走破タイムでレコード勝ち。
宝塚記念は2着。
走るたびに競馬場がファンで埋め尽くされる稀代のアイドルホースは、当然のようにここも断然の1番人気に推される。

鞍上は東のベテラン、名手の増川。
フランス帰り、そして故障によって本来のパートナーであるスーパークリークを失った悠はバンブーメモリーとのコンビで挑む。

そして名手岡江はそれまでコンビを組んできたメジロアルダンの騎乗を断り、選んだパートナーは皐月賞、大阪杯と中距離G1を2つ制覇したヤエノムテキだった。
ただこの騎乗依頼の蹴り方が奥原の癇に障るもので、アルダンを任せる横平に『ヤエノムテキにだけは絶対負けるな!』と発破かけるぐらいであった。
それは温厚な奥原には珍しいぐらいの激昂で、そんな因縁めいた対決も密かな注目を浴びていた。

だが、話題の中心はどうせオグリキャップである。
イナリワン、スーパークリーク不在のレースと言う事もあって、オグリキャップは断然の一番人気・・・
だが、調整は上手くいかず、ぶっつけ本番となってしまっていた。

そんな少し波乱めいたレースが始まる。
ロングニュートリノがハナを切り、増川の気合いが入ったオグリキャップ、そしてダイユウサクが2番手。
ヤエノムテキとメジロアルダンは中団。
悠とバンブーメモリーは中団やや後ろでレースが推移していった。

最初の1000m通過タイムが58秒4。
明らかに速すぎる。
これにまともについて行ってしまっているオグリは最後まで持つのか?と誰もが疑問に思うところだろう。

実際オグリは道中少しポジションを下げた。
先行勢のペースの速さを警戒したのか、ヤエノムテキやメジロアルダンのいる中団グループ手前まで下がっていた。

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