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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 390

そのまま3コーナーの上り坂へ・・・
この時もディザイアは最後方だった。

ゆっくり登りゆっくり降る。
そう言われる京都の3コーナーから4コーナーの坂。
それはセオリーであり、勝負を分けるとまで言われてきていた。
だが、そんなセオリーも強い馬には関係無い。
ディザイアの父であるミスターシービーはそれを無視して三冠を達成していたのだ。

そんな破天荒な父を持ったディザイアが動き出したのは、4コーナーだった。
大外を回しながら、淀の坂を高速で下っていく。
セオリー無視であるが、松中・・・そしてディザイアには勝算があった。

ディザイアの動きに先行勢、追込み勢共に動き出す。
いや、動かざるを得なくなった。
いくら若手有望株とは言え、松中にベテランのような駆け引きスキルは求めるべくも無い。
だが、ディザイアの父親譲りの豪脚を知ってる他の騎手達は、無視しておけるものでは無かった。
故にレースのスピードが一気に跳ね上がる。

逃げていたユキノサンライズは激流に巻き込まれる形となり4コーナー手前で早々と失速。
ヌエボトウショウ、カツノジョオー、イナドチェアマンといった先行勢が代わって前を争うがいずれも手綱は激しく動いており、余裕は全く見られず。

先行勢でまだ余裕があるのはイクノディクタスの村松。
しかしその後ろからウィナーズゴールド、柴原がじわじわ迫っている。

外をまくるようにディザイア。
満を持しての上昇にスタンドも一気に沸き立つ。

松中の勝負。もちろん勝算がある。

この展開を待ってましたと思っていた馬がもう1頭。
ディザイアのさらに後ろにいたキョウエイタップだ。

最近自信をつけてきている関東の若手、横平が満を持して大外からぶん回してきたのだ。
ただ惜しらむのは、ディザイアとの位置取り。
ディザイアが動いた局面で置いて行かれた事が、大きな距離を開く事になってしまっていた。

逆に4コーナーで勢いをつけたディザイアは、直線入り口では中団まで上がって大外から襲いかかる。
先行集団は軒並み脚が止まった事で内側がごちゃつき、抜け出すために中団以降が外に持ち出す。
ディザイアも仕掛けが遅ければ、更に大外を回される結果になったかもしれない。

だが、この仕掛けタイミングだった為に程よく外を疾走するディザイア。
追いかけるキョウエイタップは更に外を回されたのとは対照的だった。
そのまま勢いに乗るディザイアがグングンと伸びる。
直線半ばで先頭に立ち、そのままグイグイと前に進んでいく。

もちろん外に振られたとはいえキョウエイタップも良い伸びを見せていた。
しかし4コーナーでのポジション取りがやはりモノを言ったのか、直線でも差は詰まることはない。
ディザイアは堂々突き抜け見事に牝馬2冠を成し遂げるのであった。

渾身の騎乗に普段はクールな松中にも思わずガッツポーズが出る。
やられたという思いはあったが横平が彼を称えるように笑顔で近づき握手を求めるのだった。

ディザイアは次走をエリザベス女王杯とし、ファン投票結果と体調次第で有馬記念にも登録する事を寛子が決めた。


その翌週の菊花賞。
皐月賞馬、ダービー馬不在の中、本命メジロライアンとホワイトストーンの一騎打ちかと思われていた。
その争いを制したのは、メジロ軍団の伏兵で条件馬に過ぎなかったメジロマックイーンだった。

メジロデュレンを兄に持つマックイーンは、血統こそ見ればメジロアサマ、メジロティターンとメジロの結晶のように見える。
だが、メジロ本場ではなく預託牧場で生まれた・・・
つまり、メジロの本流ではない馬であった。
だが、父母から類稀なるステイヤーの血統を受け継いだマックイーンは、それまでの条件戦で燻っていたのが嘘のように圧倒的なパフォーマンスで菊花賞を勝利。
本場出身でメジロの期待を背負ったライアンを打ち破っての勝利だった。

アンバーシャダイと言うライバルの社来血統を受け入れてまで生産した芽城牧場期待の星は、クラシック全てに惜敗となってしまい、若い横平に批判の集まる結果となった。

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