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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 380

「あっ・・・いい事考えついたわ!」

澪がニンマリと笑ってそう言ったのだ。



時は遡って1974年。
1人のアメリカ東地区のトップジョッキーが来日した。
アイク・ベネットと言う名前のこの騎手は、中央競馬の許可を貰って3ヶ月間騎乗していた。
無論、今も当時も短期騎乗免許なるものは無かったが、競馬先進国の技術を学ぶと言う意味もあって許可されたようだ。
その後はジャパンカップの招待騎手ぐらいでしか日本で騎乗していないものの、許可されれば海外騎手が日本で短期間乗れるシステムは生きている筈だ。

何故これを澪が知っているのかと言うと、当時のマイクの通訳が澪の母親で、小学生の澪はその時の彼との関わりから騎手を目指したのだ。
そのアイクを目標に騎手となった澪。
彼とは香港遠征で再会してまた同じレースで戦おうと言われたものの、88年に彼は落馬事故で亡くなっている。

「シャロンをこの制度で呼べないかな?」
「面白いわね!聞いてみるわ!」

澪とは逆に産休明けのシャロン。
彼女が受けてくれるなら強力な助っ人になる。


…と、いうわけで短期免許制度を使ってのシャロンの来日を画策した澪と寛子だったのだが、いざ彼女に連絡してみたところ

「うーん」
「まあ彼女には彼女の事情ってのがあるのよね」

産休明け直後と言うこともあるし、シャロン自身が騎乗拠点を変えようとと考えている思いもあってか、オファーは嬉しいけど今回はごめんなさい、と言う答えだったのだ。
プランは白紙になってしまい、振り出しに戻ることに…

澪と寛子は何か手はないですかと樹里に泣きつくという最終手段に踏み切った。
短期免許制度のことも説明しつつ。

「そんな制度があるのね……」

説明を聞いた樹里の脳裏に2人の顔が浮かんだ。
エイミーとクロエだ。

そのエイミーは丁度その頃に日本に居た。
大レースで妹に負け、サンデーサイレンスの引退・・・
そこからスランプ気味のエイミーは気分転換を兼ねて北海道に来ていた。

「いい景色ね」

馬の背から見る北海道の広大な大地。
アメリカでは当たり前の広大な大地も、日本で見られるのは数少ない。
ただアメリカで見る大地とは全く違う。

「ここが私達の新たな帝国なのね」

馬を引くのはウィッチ厩舎の厩務員のキャサリン。
そして彼女が引いている馬こそ、新たな地を棲家にしたサンデーサイレンスであった。

本来は引退馬の背に乗るのは駄目だし、彼の負傷はまだ癒えていない。
エイミーが背に乗ってるのは社来ファームの好意なのと、負傷も走らないなら問題無いぐらいではある。

「まあ、彼程の絶倫なら問題無く帝国を築けるわ」
「私達ですら性的な目で見るぐらいだからねぇ」

そんな風に言いながら北海道の大地を堪能するエイミーとキャサリン。
ゆっくりと景色を堪能し馬房に戻った所で待っていたのは樹里だった。

「Oh,ジュリさん、久しぶりね」
「ふふ、エイミー、キャサリン、パートナーと日本の地を歩いた気分はどうかしら?」
「最高ね!」
「ここなら彼も余生を全うできるんじゃないかしら」

彼女たちの会話の内容が理解できるのか、サンデーサイレンスも上機嫌だった。

「それはよかったわ……本題は中で話しましょ」
そう言って樹里はエイミーを牧場のラウンジに誘う。

「ジュリ、話っていったい…」
「そうね、まず先に言うわね。エイミー、日本のレースで騎乗する気はないかしら?」

樹里の言葉に眉を寄せるエイミー。
キャサリンの方はそんなエイミーと樹里を交互に見ながらニヤニヤ笑う。

「いい機会じゃない?どーせこのままだとクロエには勝てないんだし」
「ちょっ?!負けるつもりなんて無いわよ!」

真っ赤になって言い返すエイミーだが、その当のエイミー自体が気持ちで負けているのだ。
キャサリンから見るにエイミーのアドバンテージと言えるスキル面でクロエが追いつき・・・
クロエの良さである冴えや閃きの部分で上回ったのが成績に出た形だ。
逆にエイミーの良さである読みや駆け引きの部分が、クロエに追いつかれた事で空回りして考え過ぎている感があった。

「まっ、異国で無心に馬を追ってみればいいんじゃない?」

キャサリン自身も実はウィッチ厩舎から出てここに来ていた。
自分の気に入った女しか面倒を見させないサンデーに付き合う形で、社来ファームに就職先を変えた訳だ。
彼女自身は『ヤツのメスとしては最後を看取るまで付き合うつもりだわ』なんて笑って言っていた。

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