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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 379

「今日も頑張ってくれたね、ご苦労様」

快勝してゴールを駆け抜けた後、松中はディザイアのタテガミを優しく撫でる。
レース前は多少カリカリした面を見せるが、レースが終わったら素直なお嬢さんになるのがディザイアのいいところ、と松中は評している。

本番は淀の芝2000m。
直線は府中や阪神より短いが立ち回りが上手い馬だから、何の問題もない…松中も寛子もそう思っている。

この距離なら牡馬とも渡り合える。
それだけの自信を松中に与えたレースだったのだ。



それなりに良いスタートを切れた秋競馬。
サムシングブルーこそ躓いたものの、アクアパッツァ、ディザイアはそれぞれ目標レースに向けて良いスタートだった。
だが、涼風ファームで休養していたオグリキャップはそうもいかなかった。

宝塚記念後に療養に入ったオグリキャップだが、調子が全く上がらない。
体調の回復を待ってラルフやジョンが調整を始めたものの、彼にしては珍しく走りたがらなかった。
それに旺盛な食欲も戻っていない。
とは言え並の馬より食べてはいたが、調整するラルフが『怪物どころか普通の馬だ』と漏らすぐらい、調整は上手く言っていなかった。
故に栗東への帰厩が大幅に遅れてしまい、ステップレースを使わずに天皇賞直行になってしまう事となった。

しかも栗東に帰ってからの調教も余り走らない。
別の馬と入れ替わったかと言うぐらい走っていない。
不安材料しかない中で唯一良い所は、名手増川が騎乗依頼を快諾してくれた事ぐらいであったのだ。


一方でフランスにいるスーパークリークは順調そのものだった。
前哨戦として使ったフォワ賞は頭数も少なくメンバーレベルもそこまで高くはなかったが遠征して初めての勝利を挙げることが出来た。
悠にとっても海外で初めての重賞勝ち。
その夜は自慢げに澪に電話したら「そのくらいでいい気になってるの?」などと言われてしまい、じゃあ次も勝つ、と言い放ってしまった。
…気分が良すぎてアルコールも入っていた中での勝利宣言のようなもの。
そんなやりとりも澪は少し嬉しいのだった。

とにかくクリークの調整は順調だった。

そして澪の方は、凱旋門賞と同日に行われるスプリンターズステークスのアクアパッツァの騎乗騎手の相談を寛子から受けていた。
悠がフランスに行くのは前々から分かっていたが、頼もうとした騎手が駄目になってしまったと言うのもあって選び直しなのだ。

「私が乗れたら早かったのにねー」
「妊婦が何言ってるのよ」

まだお腹は目立っていないが澪は妊婦だ。
とは言え、コッソリ調教に跨ろうとしたりしているから目を離せないお転婆ではある。
ママとなって落ち着いたのかと思いきや、そんな部分は全く変わってはいない。

「アクアちゃんより、オグリくんの方が心配かなぁ」
「それはよそ様の話だから、どうこう言えないわ」

澪も寛子も栗東帰厩のオグリキャップの調整が上手く行っていないのは知っている。
少なくとも関係者に隠せないレベルで悪いと言う事だ。
そして澪は口には出さないが、増川とオグリの相性は最悪だと思っている。
スタートから馬に気合を入れて先手を取っていく増川のスタイルだと、オグリは序盤から闘志を漲らさせ過ぎてしまう。
そうなると待っているのは後半のガス欠だ。

首を突っ込む話ではないのは分かっているが、一度、どころかかつては主戦としてコンビを組んでいたパートナーの問題である。
澪が心配するのは当然かもしれない。

「もっかい悠くんに回ってこないかな」
「クリークが万全ならそうはいかないんじゃないかしらね」

「それで、アクアちゃんの方はどうなのよ」
「んー……田沢さんもミッキーも熊ちゃんも岸田くんも先約有りなのよね…」

澪が名前を挙げた4人は他場や他馬の騎乗で予定が埋まっている。
岸田に関してはダイタクヘリオスで参戦するライバルになっている。

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