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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 378

オークス時から馬体重30kg増・・・
成長分が大半と言えど、絞りきれなかったのも事実。
牧場から帰ってきた時は40kg増だったのだ。

つまり、体調こそ万全ながら重め残しのディザイア。
一番人気ではあるが、やや割り引いて見られていた。
それに迫る人気がダイイチルビー。
華麗なる一族の令嬢は、秋に入り数段良くなってきている。
これにエイシンサニーとヌエボトウショウが続き、戦前の予想は混戦になると言うのが大方の見解だった。

「随分落ち着きましたね」
「ええ・・・いい意味でズブくなったよね」

松中が濱松厩舎の女性厩務員に笑顔で話しかけると、彼女も満面の笑顔で応える。
彼女達にとってど真ん中の王子様は悠だが、競馬界トップクラスの美男子と言われる松中の人気は勿論高い。
しかも人だけでなく馬に対する態度も紳士的なのも好かれる理由だ。
ディザイア自体も普段はプライドが高くカリカリしているが、松中には愛想が良く『良い男を理解してる』なんて言われるぐらいだった。
それがここに来て更に落ち着きを見せるようになっていた。

精神面での成長は明らかで、これで馬体重もいくらかは成長分だと言えれば…ディザイアの出来は申し分ないのだが。

レースは好スタートからカツノジョオーが逃げる。
単騎2番手でイクノディクタスが続き、ダイイチルビーは3番手の内目。
河井に乗り替わったエイシンサニーは真ん中からやや前あたりでヌエボトウショウが並走する。
ディザイアはいつも通りの後方追走でその手前にはトウショウアイがいる。

だがやはり、走らせていて重さを感じる。
発汗も目立っていたし、いつものキレが鈍っていてもおかしくは無い。

なら、どうするか・・・
強引に勝ちに行く必要は無いが、レースを捨てる気は無い。
いつもより少し前めのポジションを取って、重い部分をカバーするのも手だ。

故に松中は丁度空いた内枠の馬群の中にディザイアを入れつつ順位を上げる。
馬群の中が好きでは無くイライラしやすいディザイアの性格を考慮して、松中は集団から離れた追い込みをしてきた訳だった。
だが、今の少し落ち着いた気性なら、馬群の中もこなせるか試しておきたいと突っ込ませたのだ。

その予感が的中するように、ディザイアは多少イラついていたものの我慢している様子だった。
春までのディザイアならヒートアップしていたかもしれないが、これが成長なのだろう。

そのまま中団の位置を維持して3コーナーに向かう。
無論、この位置だと囲まれて出れない可能性もあるが、馬群の中で勝負できれば牡馬とも対等に戦えると考えた上での選択だった。

逃げるカツノジョオーのペースは平均ペース。
夏を越えて力をつけてきたこの馬の手ごたえにはまだまだ余裕がある。
2番手で続くイクノディクタスはそれをピッタリマークする。
ダイイチルビーは好位の外目。
ディザイアにとっては一番の強敵だが、コースどりでロスするかどうか…しかし鞍上は若き天才である。

さらにディザイアに追随するようにトウショウアイの鞍上・岩橋も内側に潜り込んでくる。

囲まれる・・・
そんな状況にも松中は落ち着いていた。
3コーナーから4コーナーへ向かい、そして直線へ。
落ち着き様子を伺う松中の前が僅かに開くのを見逃さず、彼はディザイアに鞭を入れる。

まるで牡馬のようなパワフルな加速。
鞭に反応し、グンとディザイアが加速して囲みを突破する。
重さは良い意味でパワーとなっている・・・
つまりこれがディザイアの成長なのだろう。

一気に加速し先頭に立つ。
そこは阪神の坂が待っているが、坂など関係ないとばかりに力強く駆け上がる。
先頭に並んだのも僅かな時間。
そこから少しずつ前に出ると、半馬身そして1馬身と差を広げていく。
先行勢も食らいつき、後続も追いかけてくるが、阪神坂をも苦にしないディザイアの力強い脚に差が2馬身と開いていく。

そしてその差が3馬身となった所でゴール。
本番に向けて樫の女王の強さを印象付けるレースとなったのだ。

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