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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 377

一番人気に支持されたアクアパッツァ。
対抗と見られるのがセンリョウヤクシャ、ホリノライデン、リリーズブーケ。
他にナルシスノワールやダイユウサク、エーコーシーザーが参戦しているが、人気実力共にアクアパッツァが抜けていると言われていた。

短距離戦のライバルと見られるバンブーメモリーやパッシングショットはスプリンターズステークス直行の模様で、ライバル不在で調整できる。
故に重賞だが、悠は気楽な気分でレースに挑んでいた。

レースは好スタートと共にアクアパッツァは飛び出し、ナルシスノワール、センリョウヤクシャに続いて3番手。
先手を取る事が必須の電撃戦において良い序盤の展開となった。
アクアパッツァの後ろにはダイユウサクとホリノライデン。
リリーズブーケはその後ろ、エーコーシーザーはほぼ最後方と言う流れでレースは進んでいく。

久々の高速な流れにアクアパッツァは戸惑いは無い。
短距離よりマイルが得意な馬だが、メンバー的に楽なのもあって悠に不安は無い。

本番であるスプリンターズステークスと開催競馬場こそ違えど、阪神競馬場は中山競馬場と雰囲気は近い。
それもあって予行演習としては最適だとも言える。
無論、悠も本番を想定してのレース運びとなるが、彼も良く知るバンブーメモリーやパッシングショットの強烈な瞬発力を想定して騎乗している。

ナルシスノワールの引っ張るペースは早いものの、短距離戦だと許容範囲と言える。
そのナルシスノワールと2番手のセンリョウヤクシャを見ながら、悠はコーナーに入った辺りからジワジワと差を詰めていく。
そして4コーナーからセンリョウヤクシャの外側を回りながら馬体を合わせ、入り口では先頭に並びかける程まで迫っていた。

そして直線入ると直ぐに、悠が鞭を振るいゴーサインを出す。
それに機敏に反応したアクアパッツァは、センリョウヤクシャとナルシスノワールを一瞬で抜き去ってしまったのだ。

先行2頭の間を割ってダイユウサクが迫ろうとし、エーコーシーザーも大外からようやく追い込んでくるが、アクアパッツァは既に態勢を決したほどのリードを持って押し切った。

秋初戦を快勝。
これで堂々胸を張って本番のタイトル獲りに挑むことになったのだ。

ただ重賞を勝ったと言うだけでは無い。
悠自身も今年の充実ぶりを実感していた。
20歳にしてG 1を何度も勝ち、海外でビッグレースに騎乗。
そしてリーディングトップを快走中と、その活躍はとどまる事を知らない。
親の七光りやら、澪が休んでいるからだとか色々言われていた声も次第に消えつつあった。

「申し訳無いけどさ・・・居場所は全部貰っちゃうからね」

観戦していた妻にそんな事を言ってしまう。
再び妊娠した彼女だが、まだお腹は目立ってきていない。

「まあ、見てなさいよ・・・そう言えるのも今のうちだけだからね」

顔だけ悔しそうにしながら、目は笑って澪は答える。
お互い冗談ではあるが、お互いに半分は本気だ。
悠は彼女が復帰するまでに、超えられない差をつけたいからだし、澪も復帰してトップレベルで勝負していきたい意思はある。
それに彼女の意思だけでなく、上層部も彼女の復帰に前向きなのもあった。
結婚出産引退と言うより、子育てしながらの復帰が競馬界のイメージアップになると言う思惑だろう。

……もっとも、悠の目論見はそれよりも早く第三子を作ることなのだが…


翌週はローズステークス。
ディザイアが秋初戦を迎える。
オークスを制して堂々GTホースとしてのトライアル参戦となるが、放牧先ではやや体調を崩すなど若干問題もあった。
それでも腕利きスタッフたちの見事な調整もあって万全に使えるまでに回復したのだ。

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