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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 376

秋の始まりは、まずはサムシングブルーのデビュー戦。
血統面を考え、できるだけ長い距離を走らせてみたいという寛子の思惑から芝1800mの新馬戦でデビューさせることになった。

入厩後の調教から跨っている悠が鞍上で初戦を迎える。
寛子が『この子に乗った印象はどう?』と尋ねると悠は一言。

「いい子ですね。いい子過ぎるくらいです」

素直で従順、そして人懐っこい。
牝馬独特のカリカリした所は無く、穏やかでのんびりした性格。
幸子や真奈は繁殖牝馬としては理想的じゃないかと言っているが、彼女はまだ競走馬なのだ。
良さとして上げられる精神面は、逆に競走馬としての闘争心の欠如と言う部分でもある。

そうなのだ・・・
調教でも手を抜かず頑張るし、騎手の指示には素直に従う。
ただレースで勝とうと言う闘争心が薄い上に、寂しがり屋の所があり、馬群から抜け出すとソラを使ってしまう。

ただ、ポテンシャルは低く無い。
バランスの取れた馬体で体質も良好。
芝ダート両方苦にしない脚。
幸子達が優秀な繁殖牝馬になるだろうと言うだけの素晴らしい馬体である。
闘争心が備われば競走馬としても活躍するだろうと悠もそこを惜しんでいた。

そのサムシングブルー。
デビュー戦はまずまずのスタートを切り馬群の真ん中。
馬に囲まれてご機嫌で走っていた。
10頭とそれなりの数が揃った新馬戦は、特に強力なメンバーがいる訳では無い。

なので普通に走らせさえすればここは勝てると悠も踏んでいる。
引っかかるところも見せないし「本当にいい子」とはまさにその通りである。

道中はうまく脚を溜めて、直線も馬群に入れつつ徐々に上位を狙っていく手法。
馬場の真ん中で前方の壁になっている馬たちを見ながら抜け出せるスペースを探りつつ、ギリギリまで追い出しを我慢する。
悠の理想通りにレースは進んだ。

そして鞭と共にゴーサイン。
反応はすこぶる良い。
ただ悠が少し眉を寄せる。
思ったより加速が悪かったのだ。
調教の時から加速は良く無い・・・
ジリ脚と言うのは分かっていた。
だが、想定より加速が鈍く感じたのだ。

鞭を叩き思い切り追うが、中々スピードに乗らない。
加速してない訳でなく一生懸命に走っているが、思った以上のジリ脚なのだ。
そのまま減速はしなかったものの、突き抜けるような加速はできずに馬群の中のまま。
デビュー戦は結局5着に終わってしまったのだ。

少し首を傾げながら悠が帰ってくる。
やはり瞬発力が無いとかではなく、闘争心の問題かもしれない。
調教の時より走れてない感があった。

「どうだった?」
「もう少しレースを積み重ねていけば面白いですね」

寛子に聞かれてそう答えた悠。
乗りやすくて良いのは乗馬までだ。
競走馬なら多少扱い難くても、闘争心を滾らせるぐらいが良い。
その点ではサムシングブルーは物足りない。
だがそれもレースを積み重ねていけば解消されていくかもしれない。

樹里からは「牝馬なので、それなりに現役を全うさせて繁殖にあげられればと思っています。勝てるかどうかはまた別の話なので…」と言われてはいるが、期待されて馬を預かっている以上、寛子はサムシングブルーも1勝はさせたい思いを持っている。
2歳戦ではこれ以上芝の長い距離はなかなかなく、次はダート1800mを使う選択肢も寛子は考えていた。

同じ日に行われるのがセントウルステークス。
短距離路線に舵をとったアクアパッツァにとっては久しぶりの6ハロン戦となる。

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