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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 375

3歳牡馬ベルメッツ。
愛ダービーではサルサビルに敗れ3着だった伏兵が外でデッドヒートを繰り広げる実力馬たちの間隙を縫っていとも簡単に抜け出し先頭に躍り出てしまったのだ。
鞍上も30代前半でまさに脂がのって勢いがある。

ベルメッツもノーザンダンサーの血を引く馬だが、父のエルグランセニョールはスピードの勝ったマイラー色が強めの種牡馬。

さらにベルメッツの内からはアサティスが顔をのぞかせていた。

そのアサティスには粘り勝ったものの、オールドヴィックには差し返されて3着。
一着のベルメッツからオールドヴィックまではクビ差。
オールドヴィックとクリークのはハナ差。
内枠であればもしかしたらと思える程の惜敗に、悠は天を見上げたのだ。

欧州屈指の大レースで3着と言うのは非常に大きい。
ダービー馬シリウスシンボリが挑戦しながらも惨敗だっただけに、欧州の競馬関係者の雰囲気は大きく変わったのを樹里も感じた。
それはラモーヌの遠征の時の感じよりも好意的に見える。
負けた事は悔しくもあるが、樹里にとっては大きな収穫だった。

「いや、もう少しでした・・・本当にもう少し・・・」

仁藤の声にも悔しさが混じるが、同時に次への手応えもある様子だった。

「次こそは・・・必ずっ、勝って見せます!」

普段は飄々とした悠が珍しいぐらい悔しさを露わにして言う。

「ええ、楽しみにしてます」
樹里は表情崩さず、2人の前でそう言った。
普段は冷静、いや冷徹ともいえるような騎乗スタイルの彼も、やはりこの悔しさが若者らしさをのぞかせる一因になったかもしれない。
それが、今後の挑戦にもいい方向に向かってくれるだろう。

クリークの最大の目標は凱旋門賞。
そこに向けてどこかでレースを挟むかは調整次第となる。

ステップレースとして考えられるのがフォア賞。
凱旋門賞と同じロンシャン競馬場で同じ距離のG 2は、有力なステップレースである。
凱旋門賞の予行演習としては打ってつけで、ラモーヌの遠征時もこのレースを前哨戦としていた。
ただ欧州の有利馬でキングジョージ参戦組は直線凱旋門に向かう例も多い。
とは言え、キングジョージと凱旋門までの微妙に長い感覚は挑戦が非常に難しく、かと言ってステップレースを挟むと日程がタイトになってしまう。
よく言われる例がニジンスキーで、彼はキングジョージを制した後にセントレジャーステークスに出走し英三冠を制している。
だが、キングジョージ後に体調を崩していたのにセントレジャー強行・・・
更に凱旋門での敗戦が批判され、以降は英三冠挑戦も挑む馬は激減し、ステップレースを挟まないローテが一般化しつつある。
こうして既に形骸化している愛三冠に続き、英三冠までも形骸化しつつあるのが欧州の現状なのである。

因みにフランスは三冠目をパリ大賞典に定めた事でアメリカ式の春シーズンのみで三冠戦を行うスタイルにして定着しつつある。

ただこれも有利馬の殆どが英ダービーに参戦する為に裏路線扱いではある。


一方アメリカではノースウィンドが地元に近い西海岸のデルマー競馬場でのG 2、サンディエゴハンデに挑んでいた。
1700mと実績ある短距離ではなくマイルディスタンス。

夏場は暑い西海岸から、比較的涼しい東海岸への遠征はよくあるのだが、今回はノースウィンドの体調的にも遠征するより近場が良いと言う事でここを選択。
アメリカでよくあるハンデ戦ではあるが、トップハンデでありながらさほど重くないのもポイントとなった。

その期待に応えてノースウィンドは快勝。
次走は東海岸サラトガに遠征してのG1、フォアゴーステークスとなり、そこでも快勝したノースウィンドはいよいよブリーダーズカップスプリントに挑む事になったのだ。


そして夏競馬が終わった日本。
ディザイアはローズステークス、アクアパッツァはセントウルステークスから始動。
サムシングブルーは阪神開催の第1週目からデビュー戦が決まった。


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