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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 373

柴原が騎乗するアサティスのハーランド厩舎は3頭出し。
うち1頭はペースメーカー的存在の格下馬だが、もう1頭のカコイーシーズは昨年のキングジョージで2着しており、厩舎としてはこちらがエース格。

人気の1頭であるオールドヴィック擁するシーセル厩舎は2頭出しで、もう1頭のベルメッツは今年のアイルランドダービーで3着。

ただし今年の愛ダービーはサルサビルという牝馬が勝っている為か世代牡馬のレベルを疑う声もチラホラ聞こえていた。

故に柴原騎乗のアサティスも悠のクリークもチャンスはあると言うのが仁藤の見方だった。

「色々言われましたが、良い決断だったと思いますわ」

長い付き合いとなる仁藤の言葉に樹里も頷く。
宝塚記念不出走でコロネーションステークス挑戦は一般のそれほど深くない競馬ファンから批判は受けた。
やはり多くはオグリキャップとの対戦を望んでいたし、急遽の前倒し遠征だった為に、悠はクリークの宝塚記念に備えてオグリキャップの騎乗を断っていた事もある。
本人は気にしていない所か、この遠征を楽しみにしねいるから良いのだが、競馬ファンからすればオグリとクリークの対戦は無いわオグリと悠のコンビも無いわで楽しみが減ったのも事実だ。
しかも詳しく無い競馬ファンは海外レースと言えば凱旋門賞ぐらいしか知識は無い。

ただ競馬を深く知る者はアスコットの伝統も知っているし、挑戦の意義も理解している。
仁藤も凱旋門賞こそ最高峰と思ってはいるが、その道程は厳しい事も理解していた。
故に結果は出ていなかったものの、シリウスシンボリの時のようにヨーロッパに慣らす必要があるとの考えは当然あった。

そのシリウスシンボリが日本ダービー後に最初に挑戦したのがこのキングジョージ。
結果こそ出なかったもののその後も長期間ヨーロッパに滞在して、凱旋門賞に挑戦した。

クリークがここでも通用しそうなのは前走の好走で、馬場への適性も見られたことで大きな自信はついた。
鞍上の悠もヨーロッパ競馬独特のコースやペースも学んだ。

いよいよレースが始まる。
揃ったスタートが切られ、クリークは前回同様好位のポジションを目指す。

先手を取りたいクリークだったが、大外枠だったせいで上手く内側に入れなかった。
予定通りラビットが逃げ、テリモンやリーガルケースが続き、クリークは6番手。
内側にはインザウイングス、後ろにはアサティスとベルメッツ。
更に後方にオールドヴィックと言う隊列でレースが始まった。

やはり大外枠と言うのがネックだった。
思った以上に深い芝で脚を取られ、スタートダッシュがつかずにこの中団・・・
しかも外を回らされる羽目になってしまっていた。
確かにハンデを背負った感があるが、2回目のアスコットとあって悠は比較的冷静でいれた。

ラビットが引っ張るペースは日本でも速いペースで、こちらだとかなりのハイペースだ。
イブンベイが引っ張ったコロネーションカップより速い感がある。
故にこの中団待機は良い選択であるように思えるが、そうとは言い難い。
クリークは瞬発力の無い馬では無いが、ヨーロッパの競走馬の瞬発力は日本以上・・・
いや正確に言うとパワーと瞬発力が比べ物にならないのだ。
いくらクリークがヨーロッパ血統とは言え、後ろから瞬発力を生かせるか未知数だ。

ペース、馬場、展開と少々予想外の事態が重なってきている感があって不安を抱く悠だが、一方のクリークはいつものように涼しい顔で走っている。

ー黙って俺のいう通りにすれば良い

悠はクリークがそう言っていると思い、彼の力を信じることにした。

かなりのペースで飛ばしたラビットの勢いも、残り1000、800となるにつれて無くなっていき、後続馬群との差が詰まっていく。

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