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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 372

そんな形で今年の3頭の預託馬のデビューは秋頃に決まった。

更に寛子からは預託馬の予定も決まったとの報告があった。
ディザイアはローズステークスから始動。
そして秋華賞、エリザベス女王杯と牝馬王道路線を進ませる事になった。

アクアパッツァはセントウルステークスからスプリンターズステークス、体調次第でスワンステークスを挟んでマイルチャンピオンシップと、こちらは短距離路線を進む。
2頭とも秋は更に期待して下さいと満面の笑みで語る寛子。
余程自信があるのだろう。

更に濱松厩舎では澪と会う。
イギリス行ってみたかったなぁと少し寂しそうに言う澪・・・
彼女が悠の応援に渡英できなかった理由は、妊娠である。
あれだけ毎日パコパコやってりゃ、そりゃあできるわと半笑いの澪だが嬉しく無い訳ではない。
ただ年子の妊娠となれば更に復帰は遠のくのがこの表情になった原因だ。

「このままだと野球チームが出来そうな気配がします」
「それはそれで良いことでもあるわね」
「でも…後輩たちがメキメキ実力をつけてる中で、トレセンに行けないのは正直…ですよね」
「そこは舘くんと相談するべきだと思うわ」

現場復帰したい思いと、有り余る性欲のバランスを整える難しさが澪を悩ませる。
悠だけでなく松中、熊崎、岸田、沖…後輩たちの活躍が澪を焦らせる。

だが樹里の見る限り、長女の舞を抱いている澪の表情はしっかりと母親だった。
それだけでなく、悠を見る目は女・・・
いや、あれはメスの目だ。
(落ち着くまでは数年かかりそうね・・・)
樹里はそんな風に思いながら澪に微笑むのだった。



そして再びイギリス。
スーパークリークが再びG1に挑戦する。
欧州屈指のビックレース、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスである。

今年は二強対決と言われており、昨年の仏愛ダービー制覇のオールドヴィック、コロネーションカップに続きサンクルー大賞典を制したインザウイングスの激突が話題であった。
だが、今年は全体的に層が薄く、他にG1勝ち馬はアサティスとリーガルケース。
それ故にか、前走2着だったクリークが3番人気となっていた。

クリークの調子は良く、悠の調子も同じく良い。
澪の妊娠発表を聞いてテンションが上がっていた。

暇さえあれば盛っていたのだから時間の問題だと思っていた第二子の妊娠。
当然嬉しいし悠としてはそれだけでは物足らず、産まれて余裕ができたら第三子づくりに精を出す気満々である。

「若い子のエネルギーってのはこうも凄いもんかねぇ」

今回、英国には柴原の姿もあった。
アサティスの共同オーナーに日本人がおり、その縁で騎乗依頼が舞い込んでいたのだ。

その柴原から樹里は挨拶を受けていた。

「白幡さん、クリークならここでもきっと勝負になりますよ」
「あら?柴原さんはそのクリークを負かす気マンマンなのに」

お互い笑い合うが、気持ちの良い笑顔だ。
職人肌で雄弁でない柴原も、念願の海外ビックレースとあり高揚しているのがよく分かる。

「こうやって世界最高峰のレースに乗せて貰ってますが・・・ダービー勝ててない私は少し恥ずかしい所です」

勿論、悠も勝てていないが、彼は一介の若手であり柴原は日本を代表するトップジョッキーだ。
そして彼の長いキャリアの中で縁が無いのがダービーであった。

「ふふ・・・それならうちの馬でダービーを勝って貰おうかしら?」

樹里の脳裏に今年産まれの黒い牡馬が浮かぶ。
トニービン産駒のパワフルレディの90は、今年産まれの最高の素材とエリック達も期待を寄せていた。

「よいご縁を頂きましたな。その機会があれば宜しくお願いします」
「ええ、こちらこそ」

柴原にとっても樹里にとっても、こう言う縁は大事だ。
きっと柴原なら、その仔に大きな勝利をもたらしてくれるだろう。

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