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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 369

クリークの父、ノーアテンションはフランスで生産された馬。
現役時代は大した成績は残せなかったが芝の長距離を得意とした馬で、障害レースにも出走し勝利したことのあるタフな馬でもあった。
クリークもそんな父の特性を受け継いでいるなら…悠もそこには期待していた。

イブンベイをマークしじっくり構えるクリーク。
そのクリークをマークするのがインザウィングス。
この3頭がほぼ等間隔で走っている。

アスコット競馬場は独特な直角三角形に近い形で、コースには3つのコーナーしか存在しない。
その中でも2400mのコースはコーナー2つを回る訳だが、最初のコーナーを回ると直線区間となる。
その直線区間を終えて最終コーナーを回ると、約500mの直線を経てゴールとなる。

コース形状の特殊さもさる事ながら、このコースの最大の難点が高低差。
高低差20mは日本で最大高低差の中山競馬場の4倍と言う凄まじくタフな構造。
特にゴール前の坂は、まさに心臓破りと言っていい。

そんなタフなコースだが、クリークはいつもと殆ど変わらぬ軽快な走りを見せていた。
だが、悠は慎重に僅かな変化を読み取ろうとしていた。
その僅かな変化がレースの勝敗を決める気がしていたのだ。

昨年のジャパンカップと有馬記念の敗戦は、クリークを飛躍的に成長させた気がする。
故に大阪杯と天皇賞で圧巻のパフォーマンスで勝てた訳だ。
今のクリークなら、このタフなコースでもスタミナは問題無い・・・
そう確信しながら最終コーナーに入っていった。

逃げるイブンベイも自分のペースで逃げてきた。
後ろにいるクリーク、インザウイングスが自分を目標に追い出してくることはわかっていた。
鞍上が一発ステッキを入れて再度突き放しにかかる。

インザウイングスも追い出しを開始して完全に三つ巴の争いとなる。
まだ余力十分のイブンベイ、追うクリークとインザウイングス。

直線に入り、粘るイブンベイに並びかけるクリーク。
悠の鞭の共に加速していくクリークだが、イブンベイも負けじと粘る。
そのまま直線半ばまでイブンベイとクリークの叩き合いが続き、やがて最後の坂に差し掛かる。

中山競馬場を遥かに超えるタフな坂・・・
古豪イブンベイもここで力尽きる。
そのイブンベイを競り落とし先頭に立つクリーク。
残りは150m程。
日本競馬に残る偉業達成まで後少しである。

だが・・・
そのクリークに競りかけてくる馬。
ジリジリと差を詰め一馬身、そして半馬身、更にクビ差まで・・・
残り50mでインザウイングスがクリークに馬体を合わせ、その差をあと僅かまで詰めてきたのだ。
悠も必死で追い、クリークもそれに応える。
ハナ差の攻防のままゴール前へ。
あと少し・・・後少しと追うが・・・
インザウイングスが少しだけ前に出た所がゴールだったのだ。

勝ったと思った。
あと少しで勝てた。
それだけに、悠はラスト数mのところで差してきたインザウイングスの姿をゴール後確認した後、がっくりと項垂れた。
完璧に乗れたと思っただけに、ショックは大きい。

しかしながら、勝利にあと一歩だった日本からの挑戦者にも勝者と同じくらいの称賛の声はあちこちから上がっていた。

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