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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 368

イギリス競馬において、最も格式の高いと言っていいアスコット競馬場で行われる、ロイヤルアスコットデー。
王族の観覧もあるこのロイヤルアスコットデーに行われるコロネーションステークスで日本の馬が健闘すれば欧州競馬界の見方も変わるだろうと言う事だ。
その意図を理解した樹里は、仁藤調教師を説き伏せてスーパークリークで急遽参戦を決めた訳だ。
スーパークリークも宝塚記念に向けての調整はしていたので急拵えと言えど走れる状態ではあったし、渡欧してからも好調を維持していた。
そしてパートナーとして選んだのは、勿論悠・・・
地元の騎手を選ぶ選択もあったが、あえて挑戦するなら悠で行くと樹里は決めていた。

確かに天才と言われる悠だが、彼の弱点は経験不足・・・
とは言え、日本の騎手を使うなら誰もアスコットの経験がほぼ無い訳で、どうせ無いなら主戦の悠で良いと言う事だ。
因みに澪に相談を一応してみた樹里だったが、澪は悪戯っ子の顔で『岡江さんか田沢さんでしょ?』なんて冗談を放って悠と樹里を困らせていたりする。

「まあ、たしかに此処でレースに乗るのは初めてだけど」

レース開催日の早朝、悠は自らの足でアスコットの芝を歩いてコースの状態などを確かめる。

「クリークのことを一番わかっているのは僕だからね…他の誰にも手綱を渡したくはないよ」

あの日は樹里が帰った後、お仕置きとばかりに澪を軽く3回ほどイカせた。それでも彼女はなんか挑発的だったような気はするけど。

クリークが挑むコロネーションカップ、出走頭数は少ない。
ライバルは昨年のジャパンカップで来日したイブンベイと、上がり馬と言われているインザウイングスの2頭。

そして観覧席の方では、マルベリー伯爵夫妻と共に樹里がいた。
その樹里の隣には留学中の奈帆も居る。

樹里と奈帆の再会はマルベリー伯爵家の中であった。
初めて会った時は田舎の純朴な少女だった奈帆は、留学でスノーベリー牧場で男を知り、祐志と出会い子供を産んだ辺りで路上売春婦のような卑猥なビッチになっていて樹里も心配していた。
だが伯爵家で会った奈帆は、良家のお嬢様のような品のある少女になっていたのだ。
聞けば今はアネットの長女と共に伯爵家で行儀見習いのメイドとして働きながら学校にも行っているようだ。
更に彼女達は2人目の娘を出産しているが、それはアルフレッドの種らしい。

「あら、祐志の事が好きだと思ってたのだけど?」
「大好きですよ・・・祐志さんが伯爵様に孕ませて貰ったら母娘で可愛がってやるって」

そう言う事かと納得しつつも納得できない樹里。
前のビッチな奈帆と比べれば今は落ち着いたように見えるが、中身は変わらずのようだ。

随分と腰は軽くなってしまったが信念は曲げない子なのは変わらない。
ベッドでは従順な子猫だが、それ以外では伯爵にも食ってかかるような部分があるらしい。
祐志や奥原相手にも引き下がらなかったあの頃からまったく変わらないところかもしれない。

「これで無様なところを見せたら祐志にも何を言われるかわからないわね」
「大丈夫です。きっと大丈夫ですよ」

レースは当然のようにイブンベイが先頭。
スーパークリークは2番手を追走する。

日本に比べて芝が深く、いつもより走りにくさはある。
それ故に控え目な位置取りと言う手もあったが、悠はあえて果敢な先行策を選んだ。
理由は、後ろ過ぎるとイブンベイを捕まえれない気がしたのと、馬群に包まれて閉じ込められたらこの芝だと加速に苦労する気がしたからだ。
それにある程度日本と同じスタイルで乗った方がクリークにも戸惑いが無いだろうと言う考えもあった。

色々そんな風に考えての騎乗だったが、やはり若い悠には経験が足りないのも事実。
2番手を選んだ最大の目的はイブンベイの走りをトレースする事だ。
日本の馬場にも適性があるイブンベイは、恐らく走り方は日本の馬に近い。
故にクリークにとって参考にしやすい。
そもそもが欧州血統の色が強いクリークは、欧州の芝への適性は日本馬の中では高いと言うのがこの遠征のきっかけではあるし、悠もそう思っている。

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