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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 365

迎える安田記念。
有馬記念以来で今年の初戦となるオグリキャップは断然の1番人気に推される。

マイルから中距離路線は群雄割拠であり、オグリは抜けた人気になってはいるが気の抜けない相手が揃う。
オサイチジョージ、バンブーメモリー、ヤエノムテキ。
さらに少し離れてホクトヘリオス、シンウインド。

当初は大阪杯からここに向かう予定だったオグリキャップ。
脚元に不安があって大事をとって回避したが、その後は問題なく調整も順調に行っていた。

何より、若き天才と怪物の初コンビと言うのが大きな話題となっていたのだ。


結局、悠はオグリキャップが何を考えているかよく分からなかった。
レースが近づいてきても彼のルーティンは全く変わらず、飼い葉桶に顔を突っ込んだら誰が何を言おうと顔を上げない。
澪が言った通り食べる事しか興味無いようだった。

だが、澪がそんかオグリキャップの所に娘を抱きながら現れると、食べるのを止めて飼い葉桶から顔を上げた。
その鼻面を撫でながら澪は悠に笑いかけた。

「調子いいから勝てるよ、オグリくんは」

そんな彼女の言葉が思い出される。
パドックで周回するオグリキャップは2人曳きで力強く歩く。
普段のボサッとした所は消え、彼の知ってる戦う姿になっていた。
敵として見たオグリキャップはよく分かっている。
そして澪と南の乗り方の違いも分かっていた。
恐らくだが、3歳の時に南、4歳の時に澪が乗っていれば成績が全く違っていただろう。
強靭な精神力で凄まじい粘り腰を見せるオグリキャップのスタイルは南が作り上げたものだが、それは一旦エンジンがかかると気を抜くのが下手なオグリキャップにとって諸刃の剣だった。

南のように馬に気合いを注入させて爆発力を産むタイプだとオグリキャップが抜く所が無くなる。
そうなるといくら怪物でも体力は持たない。
彼も疲労はするし脚も痛める。
だから道中をいかにリラックスさせるかがポイントな訳だ。


レースは予想通りケープポイントが逃げる。
それに続くのはオグリキャップとシンウインド。
シンウインドの鞍上は、くしくも去年のオグリキャップの主戦の南だった。
悠が果敢に先行した事に少し驚いているようだった。

悠としてはいいスタートを切っただけで、強引に前には出ていない。
勿論、前で勝負する予定ではあった。
それは、殆どの者がオグリキャップの武器は類い稀なる瞬発力だと思っている。
そのイメージを作り出したのは、3歳時に主戦だった澪なのだが、その澪自身もタマモクロスとの激闘でそれを捨て去っている。
つまり、超一流同士の戦いではオグリキャップの瞬発力だけでは突き抜けれないからだ。

そう言う意味で南が作り上げた強靭な粘り腰こそオグリキャップの武器ではあるが、その武器も序盤から繰り出せば必ず最後はガス欠を起こす。
故に前過ぎるポジションに南が驚いた訳だ。

南が乗るシンウインドは6歳牝馬ながら前哨戦となる京王杯スプリングカップを勝っていて、ようやく素質が開花した馬。
うまくいけばここでも通用すると見ていた。

オサイチジョージ、ヤエノムテキといったあたりはオグリとシンウインドをマークする形。
バンブーメモリーは中団からやや後方、ホクトヘリオスはいつも通り最後方あたりから末脚を生かそうという展開だ。

思い切ったオグリキャップの先行策以外は概ね予想通りの展開。
ペースもマイルらしく少し速いが影響の無い所。
後は馬の地力が試される展開だ。

オグリキャップに初めてレースに乗ってみた感覚は、調教とは全く違うと言うのが第一印象。
ガラリと変わる馬はそれなりにいるから珍しくはないものの、調教から乗っていると別の馬かと思うぐらい印象が違う。
むしろ祐志が抑えないと暴走するんじゃないかと言うぐらいなのだ。

これは凄いと感嘆しながら悠はオグリキャップを宥めるように手綱を長く持つ。
今まで暴走した事が無いだけに不安は無いが、とは言えこのまま気合いをたぎらせたまま進めるのも良くはないだろう。
悠の型にハメつつ、澪のように脱力して走らせる・・・
それが悠なりの戦略だった。

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