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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 362

残り100mでディザイアとエイシンサニーがアグネスフローラを捉え、そして交わす。
そのままの勢いで2頭が並んでゴール。

ディザイアの鬣を優しく撫でる松中。
喜んで飛び上がりたい気分ではあるが、まずは相棒を労う。

「いやぁ・・・届かなかった!」

隣に並んできたのは屈託ない少年の笑顔の岸田。
悔しさはありながらも、仲の良い先輩を労う、

「まあ、何とか追いついたね」
「僕のアレはまぐれですよ!何はともあれ、幹さんおめでとうございます!」

後輩達の面倒はよく見てきている松中は、勿論人望もある。
だが、そんな事は抜きに後輩から素直に祝福されるのは嬉しいものだった。

「やられたな!悔しぜ!」

馬を返すと、待っていたのか河井が笑顔で松中の背中を叩く。
目標とする先輩からの祝福に松中もはにかむ。
彼は後輩から慕われるだけでなく、先輩達からの信頼も篤い。

「牝馬の河井」と呼ばれるほど、牝馬との好相性を誰からも認められる先輩に褒められるのは飛び上がるくらい嬉しい事。

そして。

「幹さん、今日は完敗でしたよ」
悠も隣に馬を寄せて祝福する。
「まあずっとお前の馬が前にいたからな」
「でも幹さんと彼女の相性はバッチリじゃないですか。本当に良かった」
「寛子先生もずっと乗せてくれたからな…」

改めて松中は悠を凄い奴だと思う。
濱松厩舎と言う事で悠はディザイアの調教にも乗っている。
それだけでなく、デビューの時から調教で得た情報を松中に隠す事無く話もしている。

自分が乗ってレースに出たいだろうに、そんな事はおくびにも出さず、レースでは正々堂々勝とうとする。
勿論、勝負師的な部分もあり色々な戦術を駆使するが、決して狡い事はしない。
それでも勝てると言う絶対的な自信があるのだろうが、それはやはり天才故だと松中は見てて思う。

そんな天才が厩舎にいながら他の騎手に素質馬を任せる濱松寛子の男気(女だが)に感謝もしつつ、それに文句も言わず理解している悠もやっぱり凄いと思う松中だった。



日本でオークスが終わった次週、アメリカではサンデーサイレンスが春のビッグレースに挑んでいた。
G1、ハリウッドゴールドカップ・・・
西海岸では屈指の大レースだ。

その前に行われたG 2のトリプルベンドステークスには、ノースウインドが出走して勝利。
西海岸リーディングをトップで走るクレアの騎乗が冴え渡った一戦だった。

そのノースウィンドの勝利で勢いに乗る彼女は大一番のハリウッドゴールドカップでは頼もしい相棒クリミナルタイプとのコンビで打倒サンデーサイレンスを目論んでいた。

「負かされたら複雑ではあるけど、妹の成長は嬉しい話ね」

クリスはある取材に対してそう答えている。

もちろんサンデーサイレンス、そしてエイミーだって負けるつもりなどまったくない。
ここも頭数は少ない。
他にもオープニングヴァースとルールマンと言う昇り調子の馬がいて、メンバーレベル自体は少し高くなっている。

ただエイミーにとっての懸念点は斤量だ。
実績からトップハンデとなるのは分かっていたが、57kgは中々に重い。
ルールマンが56kgと言うので差は少ないように感じるが、クリミナルタイプの55kgと言うのは差を感じてしまっていた。

その斤量が気になりながらのレース。
ラビット宣言の逃げ馬が先頭になるのは想定済み。
だが、その逃げ馬の次につけたのはクリミナルタイプだったのが意外だった。
クレアが斤量の軽さを利用して先行した訳だ。

やられたとエイミーも舌打ちするが、無理には追いかけず3番手をキープ。
無理に追ってこないのもクレアは想定してるのだろう。
それもエイミーには腹が立つ。

ペースはやや早い。
ラビット宣言の逃げ馬はサンデーを潰す目的のラビットなのでややハイペース。
だか、エイミーの中では想定内だし、クレアもそうだろう。
どちらも消耗はするが、バテる程では無かった。

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