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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 360

華麗なる一族・・・
そう称される牝系に属するダイイチルビーはデビュー当初から話題の良血馬だった。

イギリスからの輸入牝馬マイリーから始まるこの牝系は、キユーピツド、ヤマピットと代々重賞級の活躍馬を出し、特に孫の代となるイットーからの牝系はハギノトップレディやハギノカムイオーと言う稀代の快速馬を出した。
そのハギノトップレディの娘がダイイチルビーである。

ハギノトップレディの5番目の仔にして初の牝馬。
更に天馬トウショウボーイ産駒と言う日本で考えうる限りにおいて最高の配合。
しかし見た目はけして良いとは言えず脚元も不安があり、期待外れに見えたが・・・
走り始めると他を圧倒するような快速を見せて周囲の度肝を抜いたのだ。

その血統と快速ぶりから破格の一億円と言う値段で取引され、関西の誇る明白楽仁藤雄次厩舎に預託される。
そして鞍上には若き天才舘悠。
母、ハギノトップレディに続くオークス母子連覇・・・
これに期待しないファンはいなかった。

デビュー戦は明けて3歳の2月、阪神の芝マイル。
スタートから先頭を一歩も譲らない走りで2着に5馬身差の圧勝。
このパフォーマンスに陣営も大きな期待を寄せ、1戦1勝の身でフィリーズレビューに登録するが抽選除外。
2勝目を挙げた後桜花賞にも登録するがそこも抽選で除外。

目標をオークスに切り替えてトライアルのフローラステークスを使い2着。
この時は悠が京都にいたため陣営は横平に騎乗依頼するが、先約があったため代わりに増川を起用。
レースでは中団から伸び脚を見せ2着で、オークスの出走権は得たがそのレースを制したのが横平が騎乗したキョウエイタップだった。

そして今回は悠とのコンビに戻り、母の制したオークスに挑む。
もしアクアパッツァがオークス出走した場合は悠も悩んだが、幸いアクアパッツァがNHKマイルに回った事でコンビ復活となった訳だ。
血統的に言えば同じオークス馬を母に持つアグネスフローラがライバルと言える。
桜花賞を制し、今度はここで血統の力を証明する・・・
陣営の意気込みも大きい。

だがやはり悠が気になるのは、ディザイア。
所属厩舎の馬であり、調教でも乗るからこそポテンシャルは理解している。
父のミスターシービーから受け継いだあの豪脚は、府中だと間違い無く真価を発揮するだろう。
ダイイチルビーも悠が惚れ込むぐらいのポテンシャルがあるが、完成度で言うとディザイアが遥かに上だ。
アグネスフローラ鞍上の河井は尊敬する大先輩であるが、同じ若手で仲の良い松中に勝って欲しいとの思いもある。
勿論、負けてやるつもりは無いが。


レースはトーワルビーが引っ張る展開。
アグネスフローラは中団、ダイイチルビーは中団後方、最後方集団にエイシンサニーとディザイアで序盤は推移していく。

序盤の流れは2400mのレースとしては速い流れ。
トーワルビーが1、2馬身ほど出て2番手のケリーバッグ以降がやや馬群が固まり始める。

ペースは中盤に差し掛かったあたりで少しゆったりした流れになるが2番手集団の1頭が脱落し後退。
真ん中に位置しているアグネスフローラの外に横平のキョウエイタップが並んでくる。

アグネスフローラ鞍上の河井にとって、この展開は少し悩ましい所だ。

同じ距離のダービーだとよくダービーポジションと言われる、前から10番目までの馬が勝ちやすいと言う話がある。
だがオークスは牝馬と言う特性上、それより後ろの方が来やすい傾向にある。
それは、3歳牝馬のこの時期の2400mは感覚的に牡馬より過酷で、前の方が失速しやすいからだ。

アグネスフローラは母アグネスレディがオークスを制しているものの、桜花賞の距離を意識して生産された為にオークスだと距離的にギリギリだと河井は見ていた。
その為に前に行かせ過ぎると後半失速するのは目に見えている。
特に後ろに怖い馬が居る以上、キョウエイタップに煽られて加速したそうにするフローラを宥めてこの位置をキープする。

そしてその河井が怖れる馬・・・
ディザイアは最後方に近いポジションで気配を殺していた。
松中が初めて得たG1級の馬。
普通なら焦って前に行きがちだが、そうしないのは彼が非凡な証拠だろう。
彼も悠や澪に匹敵すると評判の若手有望株なのだ。

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