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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 359

気が激しい猛獣だが、サンデーサイレンスには繊細な部分もあった。
エイミーはそれも熟知している。
もはや長年のパートナー、彼は恋人にも等しい存在だから、細かな部分まで理解していた。

クリミナルタイプとはそれなりに差があるとはいえ、マークされているとわかると気になってしまう。
それ故もっとリードを広げたいとサンデーは望む。
だがそうすると道中でスタミナを余計に使ってしまい最後に捕らえられる。
このあたりのメンタルをコントロールするかで、勝利できるかそうでないか差がつくのだ。

ミドルペースで逃げるサンデーサイレンスの後方1馬身を追走するクリミナルタイプとクロエ。
追走しながらサンデーサイレンスの視界にクリミナルタイプを入れるようにしていた。

正直、マッチレースとなるとクリミナルタイプの現状では厳しい。
サンデーサイレンスに先行して走る訳にもいかず、かと言って追走するだけでは追いつかない。
故にサンデーが一番嫌がるポジション・・・
見える位置での1馬身追走を選んだ訳だ。
これで嫌がって内側を開けたら、そこに捩じ込む。
オーソドックスだが、ストレスを与える事が勝率を上げる事ができる。
エイミーの方はクロエがそう来るだろうと想定しているから焦りは無いだろうが、クロエは暴君を少しでも激高させようとプレッシャーをかけ続ける。

本当に厭らしくなったものね・・・
エイミーの呟きは妹の成長を認めた上での事だ。
だが、成長は認めても負ける気は無い。
むしろ負けて最も腹が立つ相手はクロエだ。
そんなエイミーにサンデーは怒りながらも我慢していた。
彼も新たな挑戦者に負けてやる気は無さそうだった。

サンデーの視界には常にクリミナルタイプの姿が捉えられ続けている。
これが並の馬だったら視界に入れたくなくて暴走気味にペースを上げていってしまうのだろうが、サンデーはそれをしない。
無駄に脚もスタミナも使わないように彼自身が考えているのだ。

力で上回るのはこちらだ。
2頭の差は変わらないままレースは勝負どころに差し掛かる。

勝負の最終コーナー。
先に動いたのはサンデーサイレンスだった。

若干クロエの想像より早い仕掛け。
だが追いかけねば振り切られる。
クリミナルタイプと共にサンデーを追いかけるが、コーナー出口で2馬身差。
そのままサンデーが加速していく。

追いかけるクリミナルタイプ。
ジリジリと差は詰まるが、サンタアニタの直線はそれを許される程には長くない。
必死で追い差を詰めていくが、半馬身まで詰めるので精一杯。
直線のデットヒートで観客を沸かせただけになってしまった。

クロエが天を仰ぐ。
仕掛けを早くすれば追いついたかと言えばそうではない。
小頭数で消耗せずに走れたサンデーは、例え直線がもっと長くても追いつく気配は無かった。
だが、クリミナルタイプも互角の脚を使えたのは収穫だ。
何より、本番は次なのだ。

その次週にクロエはケンタッキー遠征でノースウィンドと共にG1チャーチルダウンズステークスを制して溜飲を下げる事になるのだった。


5月に入り、日本ではアクアパッツァがNHKマイルカップを快勝。
秋シーズンはマイル短距離路線に進む事にして休養に入った。

そしてオークスにディザイアが挑む。
前走桜花賞は勝負どころで痛恨のアクシデントによる不利があっての敗戦。
斜行ではなく馬の故障によるものだから誰を責めることができない。
故障した馬の末路は誰が見てもわかり切っていて、松中や寛子もその馬に乗っていた村松に言葉をかけられなかったのだ。

人気は桜花賞馬アグネスフローラと雪辱を誓うディザイアの2頭が上位となる……ところにもう1頭が加わる形となった。

フローラステークス2着で出走権を得て参戦する超良血馬ダイイチルビーである。

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