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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 358

クレアがここ最近、力をメキメキとつけていってるのは分かっている。
そして中東遠征からコンビを組んでいるクリミナルタイプが丁度伸び盛りなのも理解している。
そんな勢いのある者同士のコンビが手強いのは理解しているし、その差がどんどん縮まっていくのも分かっている。
それでも、それでもサンデーサイレンスが負けるとは思っていない。

「私達が相手してるのは、このメンバーでもイージーゴアでもない・・・歴史よ」

サンデーサイレンスに語りかけるようにエイミーが言うと、彼は分かってるさとばかりに嘶く。
人の言葉を理解するような賢さも持ち合わせているし、絶対的な能力も幼少時からウィッチ厩舎で見てきた名馬達より遥かに高く、レジェンドと呼ばれるアメリカ競馬史を飾る名馬達に匹敵すると思っていた。

そう思うからこそ、彼に対する世間の低評価が我慢ならない。
彼もそれを理解しているのか怒りに満ちた目で世間を見ている。
その心はエイミーも同じだ。

だからやる事は一つ・・・
勝って勝って勝ち続けて評価をひっくり返す。
それだけだ。

中東遠征帰りの強豪2頭が出走することから頭数が極めて少なくなり、サンデーサイレンスとクリミナルタイプのマッチレース的様相は一層強まる。

「姉さんはイレ込み過ぎなのよ。彼に似たのかしらね」

姉妹対決を揶揄される中、クロエの方は至って冷静だった。

荒ぶる闘志のサンデーサイレンス。久しぶりの自国レースでエキサイトしていないか、まずはそこが注目点だった。

何時も通り周囲を威嚇しながらエキサイト。
凱旋した俺をもっと見ろとでも言いたげな態度。
まさに漆黒の暴君そのもの。
ある意味見慣れたサンデーサイレンスであった。
エキサイトし発汗で鞍の辺りが白化しているが、普通の馬であればマイナス要素であっても、彼に関しては何時も通りだ。

対するクリミナルタイプは落ち着いた様子だ。
どっしりとした佇まいが、風格すら感じさせるぐらい成長を見せてきた。
父は貴公子イージーゴアと同じ大種牡馬アリダー。
やや燻んだ栃栗毛ながら、どこか品の良さも感じさせるのはアリダーの血だろうか。
ヨーロッパでデビューし、好走はしたものの勝ちに恵まれずアメリカに移籍。
アメリカでもアローワンス競争のみを好走していたが、内容は平凡。
だが、去年の暮れから実力を発揮し始め、中東遠征でも激走。
今やサンデーサイレンスのライバルの地位まで上り詰めたと言っていい。
雰囲気だけなら間違い無くクリミナルタイプの方が良い。
ただ、地元カリフォルニアのファンは暴君の破天荒な強さを知っている。

レース前にエキサイトしすぎて実戦に出てみたら案外だったらそれはただの暴れん坊。
しかし、この漆黒の暴君はその気の激しさをエネルギーにしてレースで爆発させることができるのだ。
それを地元の目の肥えたファンたちはよく知っている。
今日のご機嫌もまさにそれなのだ。
それを見てファンたちは一斉に同じことを思う。

「我々のヒーローが帰ってきた」と。

ゲート入りはスムーズ、少頭数であっという間に終わる。
スタートもそろった。

サンデーサイレンスは好スタートを切り、当然とでもいうように先頭に立ってレースを進めようとする。

小頭数かつ競り合う馬も居ないので簡単に先頭に立ち快走する。
それに続く2番手はクリミナルタイプだった。

これはクロエとして、前に行き過ぎた訳では無い。
単なる能力差だ。
このレースは2頭のマッチレースと言ってよく、他の馬は入着賞金狙いの賑やかし・・・
故に重賞クラスの馬ではない。
アメリカでは強豪同士のマッチレース的な事になると、マッチレースを邪魔しない程度の馬が登録されるケースが不文律的にある。

そんなレースだけに余り位置取りは関係ない。
サンデーサイレンスとクリミナルタイプが他を置いて快走する。
こう言うレースでよくあるのは、ラビットと呼ばれるペースを作る逃げ馬を使う事が多いのだがサンデーの気性的に邪魔でしかなく、今回は2頭を邪魔しないように後ろから追う馬しか出ていない。
アメリカでもレース中の八百長は御法度だが、ライバル対決を盛り上がる程度のメンバー選定や演出はある訳だ。

ミドルペースの流れでサンデーはそれなりにご機嫌。
だが、視界の広い馬だけに後ろに付くクリミナルタイプを意識している風ではあった。

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