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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 357

若干外寄りにはなったがイナリワンの方が末脚では勝ると柴原は踏んでいた。直線でクリークを差し切れると。

しかし。
イン側を走るクリークはイナリワンが並びかけようとしたところでもうひと伸びするのだ。
悠は相棒の底力を信じていた。
それにクリークが応えたのだ。

一方の柴原も必死の形相で追う。
追う事に関しては日本屈指の腕前かつ、彼もイナリワンの底力を信じている。

だが・・・
スタミナも瞬発力も同等。
そうなれば後は位置取りが命運を分ける。
位置取り・・・つまり駆け引きの部分で隙を見せなかった悠とクリークに付け入る隙は無かったのだ。

クリークが先頭でゴール板を駆け抜け、イナリワンが続く。
最強ステイヤーの称号と共に、天皇賞秋春連覇の偉業も成し遂げたのだ。


「やられたなぁ」

呟く柴原。
ほんの少し早く動けば追いついていたかもしれない。
いや、イナリワンを信じた結果この仕掛けだ。
悔しさはあるが悔いる事では無い。
それ以上にベテラン勢に駆け引きで勝ちきった舘悠と言う若者・・・
21歳であんな騎乗するとは、末恐ろしいと言う表現だけでは足りないだろう。
そして彼だけでなく、関西には産休中の澪も含め松中や熊崎、岸田と言ったG1を賑わすような若手も育ってきている。
これに自分の甥の善仁や横平が成長して競い合うなら、自分達もうかうかしてられないだろう。

自分だけじゃない。
岡江や児玉、関西なら南、田沢、河井…中堅からベテランたちがいつまでその若い力に太刀打ちできるか。
できなくなった時が身の引き際だろう。

それでも柴原の表情は明るかった。

「まあ、日本競馬の未来は明るいな」



同じ頃、アメリカではサンデーサイレンスが海外遠征帰国初戦を地元サンタアニタパーク競馬場でのG 2カリフォルニアンステークスで迎える。
ある意味凱旋帰国であり調整の意味合いもあるが、同じくこのレースで帰国初戦を迎えるクリミナルタイプが居る事で違う盛り上がりを見せていた。
つまりは、地元の誇る天才美少女姉妹同士の争いだ。

サンデーサイレンスにエイミー、クリミナルタイプにはクロエ、これは前走と同じ。
サンデーサイレンスのライバルに成長したクリミナルタイプに、姉妹で西海岸リーディングを争うエイミーとクロエが乗る訳だから大いに盛り上がっていた。

「2人共、分かってるわね?本番は次よ」

2頭共、次走のハリウッドゴールドカップが春の大目標。
そうクリスが釘を刺すが、2人がそれぞれを意識してるのが丸わかりだ。
何故なら、リーディングでは妹のクロエの方が先んじているからだ。
これは2人の実力が遜色無いぐらいになったからなのだが、エイミーにしてみれば穏やかならざる心境であった。

騎手としてのキャリアも、重賞勝ちも姉である自分の方が当然先だった。G Iレースを勝ったことだって。

しかし妹の方が天才肌として評価は高く、みるみるうちにその差が縮み自分が未だ到達したことのないリーディングに近づきつつある。
エイミーの心中はもちろん穏やかではない。

相棒は前年の2冠馬であり国際GTだって勝った。
ここは当たり前のように勝ちたいレースだ。

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